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 議論を疎んじ、憲法の理念をないがしろにする。都合の悪い話から逃げる。そんな姿勢がここにもあらわれている。

 天皇の代替わりに伴う式典のあり方を検討している政府が、その一部について正式に概要を決めた。このうち、皇位のしるしとされる神器を新天皇に引き継ぐ「剣璽(けんじ)等承継の儀」に関しては、釈然としない思いを抱く人が多いのではないか。

 式自体は、侍従が剣と璽(勾玉〈まがたま〉)を新天皇の前に安置するという10分間程度の短いものだ。だが神話に由来し、宗教的色彩の濃い儀式が、政教分離を定める憲法の下、なぜ国事行為として行われるのかという根源的な疑問は解消されていない。

 加えて、皇族で立ち会うのは成年の男子だけで、女性皇族は排除される。前例にならったというが、それは明治末期に制定され、現憲法の施行に伴って廃止になった「登極令」にある定めだ。平成の代替わりの際は、昭和天皇の逝去後ただちに執り行われたため、ほとんど議論のないまま援用された。

 国会でも問題視された方式を今回もそのまま実施する背景には、女性皇族の参列によって女性・女系天皇の議論が起きるのを避けたいという、政府の思惑があるとの見方が強い。

 女性・女系天皇を認めるか否かをめぐっては長年の論争があり、慎重な姿勢をとるのはわからなくはない。だがその話と参列を許さないこととは次元の異なる話だ。政権の支持層である右派の意向に気を使うあまり、社会常識と乖離(かいり)・逆行する方向に進んではいないか。

 政府は昨年、皇室制度に詳しい識者4人から意見を聞いた。

 いずれも総論としては前例踏襲を支持しつつ、同時に「国内外の通念とも調和しうるあり方とする。剣璽等承継の儀式などには未成年の男女皇族も参列するのが望ましい」(所功・京都産業大名誉教授)、「伝統の継承とは、歴史と先例を踏まえたうえで、時勢にあわせて最適・実現可能な方法を採用することを意味する」(本郷恵子・東大史料編纂〈へんさん〉所教授)といった、もっともな見解が示された。

 だがその後の政府の対応をみると、何のためのヒアリングだったのかとの疑問を抱く。

 この先も秋篠宮さまが問題提起した大嘗祭(だいじょうさい)を含め、儀式の細部を詰める作業が続く。「国民の総意」に基づく天皇であるために、憲法原則にかない、多くが納得できる姿をめざして議論を深めなければならない。政府の勝手にさせず、国会はチェック機能を適切に果たすべきだ。

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