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 東京・築地市場跡地の再開発をめぐり、都が構想の素案を示した。国際会議場・展示場を核に整備を進めるという。

 小池百合子都知事に問う。

 夢を語る前に、大事なことを忘れてはいませんか――。

 知事はおととし6月の会見で「築地は守る、豊洲を活(い)かす」のキャッチフレーズを打ち出し、こう宣言したはずだ。

 「跡地は食のテーマパーク機能を有する新たな市場にする」「事業者が築地に復帰する際のお手伝いはさせてもらう」

 築地を支持する人たちに、新旧の市場が両立できるかのような期待を抱かせたのは間違いない。このときの発言は、今なお公式に撤回されていない。

 方針を変えたのであれば「変えた」とはっきり認め、理由をていねいに説明し、理解を得るのが筋だ。新たな話を持ち出すのはそれからだろう。

 今回の素案は「食」にはほとんど触れていない。都は「築地の歴史や伝統を大切にしながら進める」と言ってきたが、ふたをあけてみればゼロからの再開発に近い中身になっている。

 知事は報道陣の取材に、「食のテーマパークを超え、文化や伝統を含めて展開する」と述べた。「超え」ではなく「やめ」ではないのか。

 東京には国際的な会議やイベントを開ける施設が足りないとの指摘はかねてある。造れば一定の需要が見込まれ、地元ににぎわいを呼ぶ効果も期待できるだろう。だとしても、黒を白と言いくるめたまま、都民の幅広い支持と協力を得ようというのは虫が良すぎる。

 近年、市場を通さない取引が増えており、中央卸売市場の役割や取扱量は縮小している。二つの市場を共存させるのが無理なのは、知事も当然認識していたはずだ。さらに「食のテーマパーク」に関しても、豊洲にすでに計画されていた集客施設と役割が重なるとして、事業者から反発を受け、身動きがとれない状態に追い込まれた。

 そうしたもろもろへの反省を率直に語ることなしに、市場関係者や都民の不信をぬぐうことはできない。「やはりあの会見は選挙を意識した甘言だった」と言われ続けるだろう。「築地は守る」を表明したのは、小池氏が知事として初めて臨む都議選直前のことだった。

 築地を育ててきた業者や住民の声も採り入れて構想を詰めなければ、この先、良いまちづくりは期待できない。不実な政治姿勢は、跡地開発の行方だけでなく、都政運営全般にも影を落とすと肝に銘じるべきだ。

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