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 春闘に向けた労使間の議論が本格化する。海外経済の波乱が懸念される中で、国内消費の拡大を通じた景気の安定を実現するためには、着実な賃上げが欠かせない。経営者は責任の重さを自覚すべきだ。

 経団連は先日発表した報告書で、「企業収益の拡大を背景とした賃金引き上げのモメンタム(勢い)を維持する」と表明した。「ベースアップも選択肢」としつつ、賞与・一時金や諸手当など「多様な方法での賃金引き上げ」も強調している。

 春闘に臨む経営側の指針として、賃上げに前向きな姿勢を示したことは歓迎したい。

 この数年間、企業利益が空前の高水準を続ける一方、働き手の取り分である労働分配率は低迷を続けてきた。雇用が増え、企業は人手不足に悩んでいる。物価も小幅ながら上昇基調だ。どの指標を見ても、賃上げが可能であり、必要であることを示している。

 大きな焦点はやはり、月例賃金の引き上げ、中でもベースアップ(ベア)だ。

 経団連の報告は「ベアの持つ累積効果」に言及した。ベアは前年度以前の分も効果を持ち続けているのだから、ベア額が前年以下でも、賃金自体は増えている、といった説明だ。

 デフレやゼロ・インフレの時代であれば、納得できなくはない。だが、物価が上昇基調になった現時点では、インフレ率を上回るベアがなければ、実質賃金は目減りしてしまう。

 経団連も「デフレ脱却」を掲げている。であれば、デフレ時代の賃金観とは決別すべきだ。今年は消費税率の引き上げも予定されており、消費の腰折れを防ぐためにも、積極的な賃上げが望ましい。

 労働側の連合は過去3年と同様、ベア2%程度に定期昇給分を合わせ、4%程度の賃上げ要求を基本方針にしている。一方で、中小企業を念頭に、「目標とすべき月額賃金」の水準も示した。同じ賃上げ率を達成するだけでは、大手と中小の賃金の差がむしろ広がってしまうからだ、と説明している。

 格差を縮めるための工夫は理解できる。だが、昨年の春闘では、これまで相場の先導役だったトヨタ自動車がベア額を示さず、今年も全トヨタ労連がベアに軸足を置いた春闘からの転換を図っている。

 なし崩しにベアが後景に退くことで、春闘が果たしてきた機能が損なわれないか、注視が必要だ。新方式の目的はあくまで従来以上の賃上げの獲得であることを、再確認してほしい。

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