[PR]

 「夜中に哺乳瓶洗って消毒するのしんどい」――。赤ちゃんを育てる親たちのそんな声がSNSにあふれている。哺乳瓶の消毒は本当に必要なのか?

 ツイッターで疑問をつぶやいた広島市の女性(27)は、生後8カ月の長女と夫(37)と3人暮らし。

 長女が生まれてから1日8回、昼夜問わず3時間おきに母乳と粉ミルクを与えていた。哺乳瓶は毎回、洗剤で洗い、消毒剤のタブレットを溶かした水につけた。生後6カ月頃に消毒はやめたが、疑問は消えない。「自分の手もなめてるし、おもちゃも消毒してない。哺乳瓶だけ念入りにする必要があるのかな」

 薬液や錠剤など、消毒グッズを販売する各メーカーが推奨するのは「生後3~4カ月ごろまで」「1歳ごろまで」などまちまちだ。「ミルトン」のブランド名で消毒薬を販売する杏林製薬(東京)は「1歳ごろまで」と推奨する。

 ■WHOなど指針

 厚生労働省は2007年、世界保健機関(WHO)などがまとめたガイドラインを都道府県に通知した。哺乳瓶は「徹底的に洗浄し滅菌することが非常に重要」とするものだ。

 ガイドラインによると、最も懸念される病原菌はサカザキ菌とサルモネラ属菌。サカザキ菌は04年、フランスで集団発生するなど計3人が死亡した。感染すれば、腸炎や髄膜炎になる恐れがある。

 ただ、フランスで発症した9人は入院中の乳児で、うち8人は2千グラムに満たない低体重児。リスクをどう考えればいいのか――。

 ガイドライン策定に向けた会議に出た五十君(いぎみ)静信・東京農大教授(病原微生物学)は「サカザキ菌は、粉ミルクを70度以上で溶かせばほぼ死滅します」と話す。ガイドラインを受け、粉ミルクの多くが「70度程度」と注意書きをした。

 では消毒は必要ない? 「それは何とも言えません。飲み残しがついたまま水で軽くゆすいで使うようならリスクは上がります」

 一方、鹿児島大の吉留厚子教授(助産学)は「消毒に振り回されている親がたくさんいる。無意味な消毒はやめていいと伝えたい」と話す。細菌を哺乳瓶に付着させて、熱湯で加熱したり、食器用洗剤で洗ったりする実験をしたが、洗剤で洗い流すだけでも細菌を取り除くことができたという。

 ■米で不要論拡大

 米国では「消毒不要」の考えが広がっている。米国小児科学会の広報担当、ノースウェスタン大学のアンドリュー・バーンスタイン臨床助教授は「温かい水と洗剤で洗って自然乾燥させれば十分。安全な水道水が手に入る先進国で特別な消毒は必要ない」と話す。

 生まれたばかりの乳児は免疫力が弱いが、小児科専門医の水野克己・昭和大学教授は「生後3カ月くらいまでは哺乳瓶を消毒しましょうというのが一般的」と言う。「3カ月以降になると免疫力も高まる。自分で指やおもちゃをしゃぶるようになると、哺乳瓶の消毒にさほど気を使わなくてもいいと思う」

 消毒が必要か不要かは家庭の生活環境などによっても異なるが、水野教授はこうも話した。「完璧主義で疲れてしまい、子どもをかわいいと思えなくなるという親もいます。気楽に楽しく子育てして頂くことが一番です」(山田佳奈、左古将規)

こんなニュースも