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 通常国会が始まった。

 巨大与党を従える安倍政権のもとで、熟議を拒み、異論を「数」で抑え込む強引な国会運営が常態化している。

 今年は春に統一地方選、夏に参院選が控える。内政・外交の課題に一つひとつ真摯(しんし)に向き合い、国民に判断材料を示す場にしなければならない。

 残念ながら、安倍首相のきのうの施政方針演説が、役にたったとは言い難い。「平成の、その先の時代に向かって」という言葉を7度も繰り返したが、具体的なビジョンが示されるわけではなく、既存の政策の繰り返しや自画自賛が多かった。

 一方で、政権が抱える難題から目をそらし、国民の疑問や批判に正面から応えようとしない姿勢が目についた。

 まずは毎月勤労統計の不正調査問題である。首相は「国民の皆さまにおわび申し上げる」と陳謝し、過少給付された雇用保険や労災保険などの不足分の支払いや、統計の信頼回復に取り組む考えを示しはした。

 しかし、厚労省が拙速に進めた検証の問題点が連日のように明らかになるなか、首相の通り一遍の言葉からは、行政への信頼を失墜させた深刻な事態への危機感も、真相解明に向けた決意も伝わってこなかった。

 多くの課題を積み残したまま、4月に迫る外国人労働者の受け入れ拡大も同様だ。

 日本の社会のありように大きな影響を与えることが予想されるにもかかわらず、首相が取りあげたのは、中小企業対策の文脈だった。しかも、「新たな成長につなげる」というだけで、共生社会の実現や技能実習制度の問題には一切触れなかった。

 消費税の10%への引き上げは「どうしても必要」と、国民に理解を求めたが、「頂いた消費税をすべて還元する規模の十二分な対策を講じる」というバラマキを強調するだけで、「その先の」負担と給付の議論の必要性については語らなかった。

 外交・安全保障分野では、過去の演説で「最も重要な隣国」などとしてきた日韓関係への言及が消えた。徴用工やレーダー照射問題など、両国関係が困難に直面しているからこそ、大局に立った首脳のメッセージが必要ではないのか。

 昨秋の臨時国会で述べた「国民の懸念にもしっかりと向き合う」という戒めも、どこかに行ってしまった。森友・加計問題の解明は一向に進んでいない。首相が率先して襟をたださぬ限り、長期政権のおごりやゆるみもまた改まらないことに、思いを致すべきだ。

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