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 これでは、教訓も再発防止策も共有することはできない。中国当局は問題の重大性に向き合い、責任ある調査と公表を行うべきだ。

 エイズウイルスに感染しないよう受精卵の遺伝子にゲノム編集を施し、その受精卵から双子が生まれた――。昨年秋、中国の大学副教授が国際会議でした発表の真偽を調べていた広東省の調査チームが、内容は事実だと認定した。8組の夫婦が協力し、さらにもう1組が妊娠中だという。副教授は倫理審査の書類を偽造し、血液検査では替え玉を使っていたらしい。

 ゲノム編集の技術は安全性がいまだ確立しておらず、子孫に未知の影響が及ぶ。副教授の試みは人体実験というべきもので、到底許されない。

 だからこそ、「双子誕生」が突然発表された時には世界に衝撃が走り、当局や科学界の対応に注目が集まっていた。

 ところが国営新華社通信が先週、「初歩的調査の結果」としてごく簡単に報じただけで、その後も沈黙が続く。調査した主体、方法、対象に始まり、副教授の意図や認識、誕生までの経緯、偽造や替え玉が見逃された理由などの詳細はわかっていない。遺伝子の操作に関するデータも一切示されず、およそ納得できるものとはいえない。

 中国はゲノム編集の研究に豊富な資金を投入し、多くの研究者を抱え、強い影響力を持つ。この技術の健全な発展のためにも、他国の研究者の検証にも堪えうる透明性のある調査が不可欠だ。生まれた子どもの今後をどうフォローしていくのかという、重い課題を抱えていることも忘れてはならない。

 15年に世界で最初に受精卵の遺伝子改変を試みたのも、中国の研究者だった。この時も世界から拙速さを非難する声が上がり、年末に共通認識をつくるために国際会議が開かれた。そしてその第2回会議で双子の誕生が発表された。中国の科学界、そして政府の姿勢に不信の目が向けられるのは当然だろう。閉鎖的・独善的な体質を変えていく取り組みが不可欠だ。

 日本もひとごとではない。

 ゲノム編集した受精卵を研究目的で子宮に移植することは、今春施行の国の指針で禁じられるが、医師が治療目的で行う場合は対象にならない。政府の有識者会議では「法による規制が必要」との意見が出ている。

 国際的なルールをつくろうとする動きもある。その動向も踏まえ、日本としてどのような縛りをかけるか、関係省庁は検討を急がなければならない。

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