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 海の生物多様性を守るため、沖合に海洋保護区を設けるべきだ。中央環境審議会が、そんな答申を原田義昭環境相に提出した。政府は海の生態系保全に本腰を入れなければならない。

 国際的には「2020年までに海域の10%を保護区にする」との目標がある。9年前に名古屋市であった生物多様性条約締約国会議で「愛知目標」の一つとして盛り込まれたものだ。すでに各国の領海・排他的経済水域の17%近くが保護区になり、来年には24%を超える。

 ところが日本の保護区は8・3%にとどまっており、主要国の中で対応が遅れている。しかも、その多くが水深200メートルより浅い沿岸域に集中していて、より深い沖合域はほとんど手つかずのままだ。

 日本の領海・排他的経済水域は世界6位の広さで、3万種を超す生物がいる。豊かな海に囲まれた国として、生物多様性保全の務めを果たしているとは言いがたい。取り組みを加速させるべきだ。

 特に沖合域の深海には、沿岸域とは違う独特の生態系がある。巨大なダイオウイカや、海底の熱水噴出孔を好むコシオリエビの仲間のように、固有の生き物も多い。海底の地形を含めて全体を保全することが、生物多様性を守るのに欠かせない。

 今回の答申は、人間の活動で深海の環境が乱されないよう、自然環境保全法にもとづく保護区の設定を求めている。環境省は通常国会に法律の改正案を出し、来年にも小笠原諸島の沖合に保護区を新設する。

 保護区内では、海底を乱すような資源開発や漁業などが規制される。排他的経済水域は領海に比べて管轄権が限定的だが、関係省庁が連携し、監視や取り締まりをする必要がある。

 いうまでもなく、保護区を設けるだけでは不十分だ。保護区の海中を科学的に調査し、生態系の情報を集める。それを継続し、異変を見落とさないようにする。そうした取り組みを怠ってはならない。

 環境省によると、小笠原諸島の沖合に新たな保護区ができれば、愛知目標の「10%」を達成できるという。

 だからといって胸を張ることはできない。「8・3%」の既存保護区の大部分は、漁業法などで水産資源を保全するものだ。海の生物多様性を守る「真の保護区」は、ごく一部にとどまっている。

 うわべの数字を整えるのではなく、「真の保護区」を広げていく。それが豊かな海に浮かぶ島国の責務である。

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