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 いまも人々の間に余韻が残る。全米に続いて全豪オープンを制した女子テニスの大坂なおみ選手の活躍である。

 中米ハイチ出身の父と日本人の母の間に生まれ、幼いころから米国で教育を受けた彼女は、グローバル時代を象徴する存在だ。試合中継のテレビ画面のスコアのわきについている日の丸や、「アジア勢として初」といったくくりを超えて、その魅力は世界に広がった。

 表彰式では、強盗に襲われ利き腕を手術する不運から復活した決勝の相手クビトバ選手(チェコ)を、まずたたえた。全米の時も、優勝を争ったS・ウィリアムズ選手(米)は自分にとって長年のアイドルだったと打ち明け、感謝の言葉を捧げた。

 優れた敗者がいてこそ勝者は輝く。楽しい「なおみ語録」は人気の的だが、その根底には、スポーツの本質を理解し、大事にする心が流れる。

 力をもちながら、1年前まではミスで自分を見失い、敗れるシーンが珍しくなかった。急成長した背景にはコーチやトレーナーの存在が大きい。わずかな失敗にも落ち込む大坂選手に、ドイツ出身のコーチのバイン氏は「なおみならできる」と背中を押し続けたという。

 過去に、「アイドル」のS・ウィリアムズ選手らの指導にも携わった経験をもつ。個性を見極め、抑えつけず、選手に応じたアドバイスをする。昨年は女子テニス協会(WTA)の年間最優秀コーチにも選ばれた。

 日本ではこの1年、スポーツ指導者の不祥事が相次いだ。互いの人格を尊重しあう姿勢、言葉の選び方、距離感の保ち方など、大坂選手の躍進から学ぶべき点は少なくないはずだ。

 身の回りのサポート役だけでなく、選手の力を引きだすため全体で環境整備に取り組んできたのが女子テニス界だ。

 WTAは今年からルールを改め、妊娠や出産で休養した選手が復帰する場合、12大会までは以前と同じ世界ランクでプレーできるようにした。ランクが大きく落ちると待遇が変わり、プレーにも響くため、復帰を断念する例が多かった。選手側の働きかけが実った形だが、女性スポーツの将来を考えた時、意義深い改革といえよう。

 男子の数分の1といわれた優勝賞金も、現在は4大大会すべてで同額になった。WTA設立から46年。これも選手らの交渉と努力の結果で、他の競技や社会に与えた影響も大きい。

 そんな土壌の上に咲いた大輪が、次の時代を切り開く。さらに前に進む姿に期待したい。

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