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 2018年度朝日賞と第45回大佛(おさらぎ)次郎賞、第18回大佛次郎論壇賞、18年度朝日スポーツ賞の贈呈式が30日、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれた。朝日賞の木庭顕さんや平野達也さん、大佛論壇賞の小松理虔さんらが表情豊かに受賞への思いを語った。テニスの全豪オープンで優勝したばかりの大坂なおみ選手も、ビデオでコメントを寄せた。

 ■知的伝統の重要性、若い世代に ローマ法研究者・木庭顕さん(朝日賞)

 私はギリシャ、ローマから現代に至る知的伝統の重要性について、若い世代に伝えようとしてきました。時代に流されないことは簡単ではないが、重要です。その時こそ、古典の力が安定的です。また、そうした太い知的伝統は、人間の可能性への深い信頼を培います。教育に置き換えると、若い人たちの可能性に全幅の信頼を置くということ。(対話を通して)若い世代の良さを引き出すことが、現代の日本でも可能だという強い確信を持ちました。我々の対話に共感する読者も多数います。まだ、絶望する必要はありません。

 伝え手にとって重要なのは、受け手を低く見ないこと。伝わらないとしたら、レベルの落とし方が足らないのではなく、レベルそのものが低すぎるのです。

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 こば・あきら 著書に『憲法9条へのカタバシス』『誰のために法は生まれた』など

 ■映画の歴史、光も闇も背負って 映画監督・是枝裕和さん(朝日賞)

 テレビの仕事からスタートし、今年が33年目。その当時を知る先輩たち、映画を作る上で支えてくれるスタッフ、仲間たちも来てくれています。すごく幸せな30年だと改めて思います。

 これまでの受賞者に、映画監督では黒澤明、新藤兼人、山田洋次、宮崎駿の名前があります。そこに自分が連なるのは責任が重い。

 海外の映画祭でも、名誉賞のようなものを頂くことが増え、周囲からそろそろゴールが近いと言われている感じがちょっと嫌なんです。映画監督としてはこれからのキャリアの方が大事だと考えています。映画が時代の中でどんな役割を果たし、どう翻弄(ほんろう)され、翻弄する側に回ったのか。歴史の光の部分も闇の部分も背負い、今後も映画を作っていければと思います。

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 これえだ・ひろかず カンヌ国際映画祭で「万引き家族」が最高賞のパルムドールに

 ■暗号は人類の知見のくみあげ NTTフェロー・岡本龍明さん(朝日賞)

 暗号は安心してインターネットを利用するための基盤技術です。私が取り組んだ「楕円(だえん)曲線暗号」はインターネットのほか、ビットコインやブロックチェーンなどでも使われています。皆さんも意識せずにこの暗号を利用したことがあるのではないかと思います。

 また、どんな暗号方式も必ず最も強い安全性をもった暗号に変換できる一般的な方法を考案したほか、応用研究も進めてきました。

 暗号とは数学や計算理論、情報科学など人類が長年かけて獲得した自然科学の知見をくみあげて、社会に役立てようとするものです。30年以上前に暗号に出会ったとき、暗号の持つこのような性質に大変魅了されました。これからも暗号研究を通じて社会に貢献できればと考えています。

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 おかもと・たつあき 暗号の安全性理論を確立し、インターネット社会に貢献

 ■基礎研究の評価、何よりも喜び 理化学研究所主任研究員・平野達也さん(朝日賞)

 染色体は、遺伝情報を次世代に継承する生命の本質です。私は、長いDNAが細胞の中でどのように折りたたまれて染色体が作られるのかという基本的な問題に取り組み、主役を担うたんぱく質「コンデンシン」を発見しました。このような基礎中の基礎の研究を評価していただいたことを、何よりもうれしく思います。

 日本の基礎科学は今、危機に陥っています。科学の有用性のみが強調され、評価の対象になっています。しかし、科学は社会的な利益を生むための手段ではありません。科学は文化なのです。文化と人材は丁寧に継承していかなければなりません。今後も研究を続け、次世代に「誰よりも深く考え抜き、深く掘り下げる」という科学者精神を継承していくつもりです。

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 ひらの・たつや 染色体構築で主役を担うたんぱく質「コンデンシン」を発見

 ■誰も想像できぬ「極夜」を探検 ノンフィクション作家・探検家、角幡唯介さん(大佛次郎賞)

 受賞作『極夜行』で描いたグリーンランドの北極圏で犬ぞり訓練中のため、ビデオメッセージを寄せた。

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 『極夜行』は、太陽が昇らず、夜がずっと続く冬の北極を探検した本です。現代は「地図の空白部」がなく、地理的な探検が難しいので、人間の社会システムの外側に飛び出し、未知の世界を探りたいと、だれも想像できない「極夜」の世界の探検に挑みました。4年かけて準備し、80日間暗闇を歩きました。旅の後半、久々に太陽を見た時は非常に感動しました。普段はできない旅ができた手応え、それを文章にまとめることができたという手応えもありました。受賞の報をいただいた時は本当にうれしかったです。ありがとうございました。

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 かくはた・ゆうすけ 受賞作『極夜行』。本作で本屋大賞ノンフィクション本大賞も受賞

 ■被災地の肩書外して楽しんで 地域活動家・小松理虔さん(大佛次郎論壇賞)

 初の単著で受賞し、身の引き締まる思いです。私は地域活動家を名乗り、港で写真を撮ったり、商品を配達したり、イベントを企画して商品を販売したりと、常に現場にいる人間です。

 受賞作を出版したゲンロンの東浩紀さんは「誤配」という言葉を使います。想定しない人に間違って届くことで、凝り固まったものが解きほぐされる。誤配にはある種の「不真面目さ」が必要だと言います。

 被災地はこの8年、真面目さを求められました。福島を語れば「数字が取れない」。安直な感動話や、健康被害を盛る言説も生まれました。ぜひ福島へ、いわきへお越しください。被災地の肩書を外し、いわき湯本の温泉、あんこう鍋と熱燗(あつかん)を楽しんでいただけたら。お待ちしています。

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 こまつ・りけん 受賞作『新復興論』。福島県いわき市小名浜で地域づくりに取り組む

 ■楽しめている時、最良のプレー プロテニス選手・大坂なおみさん(朝日スポーツ賞)

 全豪オープン女子シングルスで優勝を飾った後、次戦の準備のため、ビデオメッセージを寄せた。

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 とても権威のある賞であり、受賞できたことは意義深いと感じています。

 2018年は本当に信じられない年でした。物事が起こるスピードがとても速く感じました。日本の皆さんの応援には、いつも感謝しています。この経験を糧に今後も成長できていければいいな、と思います。

 全米オープン優勝をもちろん思い出すことはあります。ただ、私は過去よりも未来志向の人間です。

 19年は楽しみながらテニスに取り組みたい。自分は楽しめている時にベストなプレーができると思っているので。1試合1試合を大事にしていきたい。

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 おおさか・なおみ テニスの全米オープン女子シングルス優勝。全豪でも頂点

 ■当たり前に混ざり合う社会を 日本ブラインドサッカー協会(朝日スポーツ賞)

 視覚障害者と健常者が一緒にプレーするブラインドサッカーにより、「当たり前に混ざり合う社会」というビジョンを実現しようと取り組んできました。

 (松崎英吾専務理事が寺西一選手と声をかけ合いながら壇上でパスをかわし)いま、このパスという行為の間、彼の目が見えない、障害者だといった考えは私の中に一切ありませんでした。フラットに人として向き合っていました。もし、街で出会っていたら、知らぬ間に障害の有無という「二項対立」でみてしまう。スポーツを通じた出会いは違います。

 2020年東京パラリンピックは、障害に対するまなざしを変えるチャンスです。皆様をブラインドサッカーの会場でお待ちしています。

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 競技普及を兼ねた学校での体験授業などを通じ、共生社会への理解を促進

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