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 中国において、弁護士の仕事は極めて過酷なものだ。

 捜査当局の調べに違法な行為はないか。容疑者の人権は守られているか。依頼人がもつ法律上の当然の権利を確認するだけでも、大きな危うさを伴う。

 もし共産党政権を批判する行為と見なされれば、自らが連行されてしまう可能性がある。場合によっては逮捕され、刑務所に送られることもありうる。

 最近では、2015年7月9日以降に起きた「709事件」の弾圧が知られている。多数の弁護士らがさまざまな容疑で一斉に拘束されたのだ。

 その一人で、3年半にわたり拘束されていた王全璋弁護士(42)に、懲役4年6カ月という実刑判決が下された。

 王氏のような弁護士は中国語で「維権」派と呼ばれる。法で定められた権利を擁護しようとする人々という意味だ。

 王氏の場合、強制立ち退きを迫られた農民や、中国当局が邪教とする気功集団「法輪功」のメンバーの弁護活動をしていた。判決では、これらに関わる言動が国家政権転覆罪に当たるとされた模様だ。

 多数の弁護士が取り調べで拷問のような行為を受けたとの証言もある。王氏は家族との面会も許されず、弁護士を選ぶ権利も与えられなかった。判決公判は家族にも非公開で行われた。こうした手続きこそ、当局による違法行為であろう。

 中国を最初に統一したと言われる秦の始皇帝は、法によって人々を厳格に管理する「法家主義」の統治をしたことで知られるが、皇帝自身は常に法の外に存在した。同じように、習近平(シーチンピン)国家主席や共産党の強調する「法による統治」も、自分たちだけは法を守らなくていいというものなのだろうか。

 中国のような共産党の一党支配国家でも、公正な司法が社会秩序の土台にあるべきだ。弁護士の権利さえ守れないようならば、司法のシステムが機能を失い、国の統治も不全に陥る。そんな事態は、共産党を含め誰も望んでいないはずだ。

 世界に広い影響力を及ぼす中国の人権状況は、国際社会全体の問題でもある。ドイツのメルケル首相は訪中時、拘束された709事件の弁護士の家族と会った。日本を含めた各国はこの問題を深刻にとらえ、共産党政権に即刻対処を求めるべきだ。

 中国外務省のスポークスマンは常々、「法の下では誰もが平等だ」と繰り返す。ならば、その言葉を現実とするためにも、弁護士への弾圧はただちに停止されなければならない。

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