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 達成の道筋が、まったく見えない。

 国の政策を実行するのに必要な経費を借金に頼らずにまかなえるかを示す、基礎的財政収支(PB)の黒字化目標のことだ。安倍政権は、2025年度の実現を掲げる。

 政府の新しい試算によると、成長率が実質で1%、名目で1%台後半程度という、最近と同じような経済状態が続く前提では、国と地方の基礎的収支は28年度まで6兆~15兆円規模の赤字のままだ。

 実質で2%、名目で3%以上の高い成長が実現すれば、将来の国の税収は足もとより3割ほど多い80兆円超が見込め、26年度には黒字化できる、とはじいた。

 経済の現状を見れば、後者のシナリオは夢物語に近い。戦後最長となった可能性がある現在の景気回復期は第2次安倍政権と重なるが、成長率は実質で1・2%、名目で1・8%だ。

 経済を立て直し、税収を増やす努力は必要だ。あわせて実際の政策は、甘い前提が崩れても耐えられるよう、慎重に考えていかねばならない。

 安倍首相は施政方針演説で「負担を次の世代へと先送りすることのないよう、25年度の黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進めます」と述べた。

 しかし先送りしてきたのは、首相自身ではないか。

 第2次安倍政権では、景気回復が続きながら、歳出抑制が緩みがちな補正予算を10回組んだ。法律で決まっていた消費税の増税は、「新しい判断」などとして2度延期した。

 これで黒字化を見通せるはずもなく、首相は昨年、目標の時期を当初掲げていた20年度から、自らの自民党総裁の任期後へ先送りした。

 借金の膨張に一定の歯止めをかけたいと、小泉政権が02年に目標を示したときは、「10年代初頭」を期限にしていた。ところが黒字になることは一度もなく、代々の政権が何度も目標時期を先送りしてきた。

 日銀の金融緩和で金利が低く抑えられ、いまのところ経済や暮らしに大きな影響は出ていない。しかし超高齢社会は、もう目の前に迫っている。

 社会保障を持続可能なしくみとするため、受益と負担のバランスをどうとっていくのか。サービスの内容の見直しや税の姿も含めた具体的な選択肢を示し、議論を始めることこそ、待ったなしの政治課題のはずだ。

 歴代最長の在任期間が視野に入る首相。その責務からなお、逃げ続けるつもりなのか。

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