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 政府は先月の月例経済報告で、「景気は緩やかに回復している」との判断を維持した。12年12月に始まった今回の景気回復が、これまで戦後最長だった02年2月~08年2月の6年1カ月を上回る長さになる可能性が高まった。

 最終的な判定はまだ先だが、景気回復が続いてきたことは歓迎したい。脱却とは言えないまでもデフレは一段落し、雇用状況も改善した。堅調な世界経済や円安にも支えられ、企業業績は好調を続けた。中小企業や地方にも波及が見られ、裾野も一定の広がりを見せている。

 だが「水準」面では低空飛行のままだ。この間のGDP(国内総生産)の実質成長率は平均1・2%程度で、08年にかけての回復期の1・6%を下回る。中でも家計消費の伸び悩みが著しい。これだけ長期の回復を経ても、経済の好循環が回り始めたとまでは言えそうにない。

 好調な企業業績にもかかわらず、家計消費が増えない。となれば当然、その間をつなぐはずの賃金の動きが焦点になる。

 厚生労働省の不正で、賃金動向の基幹統計の精度が揺らいでいるのは、マクロ経済の実態把握や政策対応のうえでも重大な問題だ。統計の立て直しは、この観点からも急務である。

 しかし様々な指標を見ると、企業の賃上げ姿勢は、好業績や「人手不足」にもかかわらず、あまりに消極的だ。ベースアップが物価上昇率を下回れば、実質賃金は下落する。賞与や一時金で上積みするというが、月給が目減りする中で、日常的な消費を増やす気になるだろうか。

 景気回復の初期においては、労働分配率や実質賃金が下がることもあるだろう。だが、これだけ長期にわたってその状況が続けば、多くの家計が景気回復を実感できないのも当然だ。経済界と政権は、この状況を直視すべきだ。

 先行きにも、不安材料が山積している。外需は米中摩擦を背景に不透明感が増すばかりだ。中国は景気テコ入れを図り、米国も利上げを休止したが、為替相場の動きも含め、日本経済への影響は読みにくい。一方で、企業の心理が過度に冷え込み、賃上げや設備投資を抑え込めば、自らの首を絞めることにもなりかねない。

 今回の景気回復の始点は安倍政権発足と同時であり、政権は経済政策の成果を誇ってきた。だが、低空飛行を脱せないまま、前方には暗雲が兆し、政策の余力も限られている。経済運営の面で、政権の真価が問われるのは、むしろこれからだ。

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