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 店やサービスを利用するとポイントがたまる共通ポイントカードの大手「Tカード」の運営会社が、捜査機関から照会があれば、裁判所の令状がなくても会員の個人情報を提供していることを明らかにした。

 危うい運用と言わざるを得ない。利用者の間に不安と不信が広がったのは当然だ。

 警察や検察は捜査の一環として多くの情報を集める。刑事訴訟法は「公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と定めており、憲法の「通信の秘密」で保護される通信履歴などを除いて、多くの企業・団体が令状なしの提供に応じているのが現実だ。

 だが、共通ポイントカードにひもづけされた情報は、ひときわ慎重な扱いが必要だ。企業間の提携が進んで、どの店で、いつ、何を買ったかといった膨大なデータが運営会社に集まる。分析すれば、生活履歴や行動パターン、趣味まで分かる。交通系ICカードなども同様だ。

 集積された情報は、それらが個々にある場合とは質の異なるものに転化し得る。だからこそマイナンバーカード導入の際に一定の保護策がとられ、国際的にも大きな課題になっている。

 最高裁は17年、捜査対象者の車に無断でGPS端末を取りつけることは、プライバシーを侵害するもので令状がなければ行えないとの判断を示し、法整備の必要性に言及した。この捜査手法が個人の行動を「継続的、網羅的に把握する」ことを重視したうえでの結論だった。

 Tカードの特性にも重なる指摘ではないか。警察は「必要な内容に絞って照会している」というが、当局の恣意(しい)に任せず、収集・提供の要件、手続き、不要になった情報の消去を含む管理のあり方について議論し、適切な規律を設けるべきだ。政府がキャッシュレス化を進めるいま、それは時代の要請である。

 提供する側の責任も大きい。

 Tカードの運営会社は12年までは令状を求めていた。だが保有する情報の価値が高まったことから、「社会貢献」のために不要にしたという。大事な情報だから厳格に取り扱うべきなのに、理解できない説明だ。

 グーグルや無料通信アプリのLINEなどは、捜査機関の照会に応じる基準や実際の件数を公表している。それが社会に対する最低限の責任だろう。

 利用者にも、企業の取り組みをチェックし、おかしな運用を許さない姿勢が求められる。プライバシー保護と犯罪の摘発という二つの要請の間で、納得できる均衡点を見いだしたい。

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