[PR]

 女性が妊娠し、子どもを授かる。その営みは人間の基本的な自由の領域であり、どんな権力も強制力をもって踏み込むべきではない。

 ところが中国では1970年代末から、国民の出産を強制的に制限する政策が続けられてきた。「一人っ子」政策と呼ばれた人口抑制策である。

 ここ数年、徐々に緩和され、今では「ふたりっ子」政策に変わっているが、妊娠や出産を強権的にコントロールする制度は廃止されていない。

 中国の産児制限による深刻な人権侵害は国際的に知られている。違反して妊娠した多くの女性が中絶手術を強いられてきた。男女問わず、無理やり不妊手術を施された例もある。

 当局の非情さに対する人々の恨みは、今も根強い。町内会のような地域の住民組織に担当者が設けられ、問題のある妊娠がないかどうか各家庭の動きに目を光らせる。そんな尋常でない実態が続いてきた。

 そもそも産児制限は人口の爆発的な増加を避けようとして、共産党政権が始めたものだ。しかし、著しい経済成長を遂げた中国社会ではもはや、人口の自然増を抑える意味は乏しく、むしろ出生数は年々減っている。

 先月発表された統計によると、昨年の出生数は前年比200万人減の1523万人。61年以来の低水準となった。早ければ2021年に人口減社会になるとみられている。

 高齢化も進んでいる。昨年末での65歳以上の人口は、全体の11・9%にのぼる1億6658万人。日本ほど深刻ではないが、2030年までには、中国でも全体の5分の1が65歳以上になるとの推計もある。

 40年間にわたる「一人っ子政策」による人口構成のゆがみが原因で、少子高齢化の速度は日本より速い。今後、労働力人口が急減するとみられ、経済活動への影響も懸念されている。

 最近では、これまでと一転して出産奨励も始まった。地方政府のなかには奨励金の支給を検討するところもある。人民日報など中国メディアは出産を促す特集を相次いで出している。

 心配するのは、これらが産児制限と同様に何らかの強制につながる恐れだ。増減いずれの方向であれ、国民の出産を強権で管理するのは人道に反する。

 習近平(シーチンピン)政権はすぐにも産児制限の制度を撤廃すべきである。そのうえで、人口問題にどのように取り組んでいくのか。人権に十分に配慮したうえで、持続可能で透明性をそなえた政策を示さなければならない。

こんなニュースも