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 発言を撤回し、陳謝したが、むしろこれが、偽らざる本音ではないのか。

 麻生副総理兼財務相が地元・福岡県内での国政報告会で、少子高齢化について「年を取ったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違い。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」と述べた。

 そもそも、子どもを産むか産まないかは、個人の自由な選択によるもので、政治家が口をはさむべきではない。加えて、麻生氏の発言は、子どもを持てない人への配慮を欠き、少子化の責任を個人に転嫁しようとするものだ。看過できない。

 野党の批判を受け、麻生氏は「誤解を与えたとすれば、撤回する」「不快に思われるなら、おわび申し上げる」と述べた。しかし、この言いぶりから真摯(しんし)な反省は伝わってこない。

 麻生氏は14年末の衆院選の応援演説でも、「高齢者が悪いようなイメージをつくっている人がいっぱいいるが、子どもを産まない方が問題だ」と、今回と同様の発言をしている。もはや確信犯と言うほかない。

 非正規雇用が増え、低賃金や将来不安から、結婚や出産をためらう人たちがいる。子育てをしながら働ける環境も十分ではない。少子化の危機が叫ばれながら、抜本的な対策を怠ってきたのは、長年政権の座にあった自民党ではないか。

 個人の生き方を支援するというよりも、国力の維持のために出産を奨励する。自民党の政治家からはむしろ、戦前の「産めよ殖やせよ」を思わせる発言が後を絶たない。

 菅官房長官は15年、人気俳優同士の結婚に際し、「ママさんたちが一緒に子どもを産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれたらいい」とコメントした。参院副議長も務めた山東昭子参院議員は17年、「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と述べた。昨年6月には二階俊博幹事長が「この国の一員として……、子どももたくさん産んで、国も栄えていく」と語っている。

 安倍政権は「全世代型の社会保障」を掲げ、子育て支援にも力を入れるというが、一連の発言をみれば、人権と多様性を尊重し、子どもを産み育てやすい社会を本気で築こうとしているのか疑わしい。

 麻生氏を要職に据え続ける安倍首相は、少子化対策で政治が果たすべき役割を理解しているのか。問題は政権の認識そのものである。

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