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 小中学校ごとにテストの点数アップを競わせ、その結果で先生を評価し、学校への予算配分でも差をつける。

 大阪市の吉村洋文市長がこんな考えを示してから約半年。市教育委員会が具体的な制度案をまとめた。

 当初の市長構想と比べると、直接の評価対象を校長に絞り、学力以外の項目にも配慮したという。しかし基本的な考え方は変わっておらず、学力競争に伴う弊害への懸念は消えていない。改めて撤回を求める。

 新年度から試行するという制度案の内容はこうだ。

 学力の測定には、市内の小3から中3までの児童・生徒が毎年、基本教科について受ける市や大阪府の独自テストを使う。各校はあらかじめ、市教委が定めた下限を踏まえて独自の目標値を設定し、達成度を校長の人事評価に組み込んでボーナスの一部に反映させる。

 教員については、市教委から提供されるテスト結果を参考に校長が評価する。点数アップに貢献した教員を表彰することも検討する。予算には特別枠を設け、成果を残した学校に重点配分する。

 当初は国の全国学力調査の結果を活用する方針だった。調査で大阪市が2年続けて20政令指定市の中で最下位になり、それを吉村氏が問題視したことが発端となった経緯がある。

 しかし、文部科学省が「学力調査の趣旨を逸脱する」と指摘し、小6と中3だけが受ける調査で先生を広く評価できるのかとの疑問も出て、修正した。

 多くの学年が対象の独自テストを使えば、確かに評価はしやすくなるが、競争の弊害は大きくなりかねない。市教委が校長を、校長が教員を評価することで、学校全体を巻き込むことになるだろう。

 先生が目の前の成績向上に追われるあまり、点数が芳しくない子をテスト当日に休ませたり、成績の集計からはずしたりする不正を誘発しないか。かつて実際にあった問題だけに、杞憂(きゆう)とも言えまい。

 そもそも学力には、学校での指導のほか塾通いの有無、家庭の環境や経済状況など複数の要因が絡み合う。学力低迷の背景にいじめや虐待、不登校などがある場合も少なくない。

 子どもたちが発するSOSに目を配り、安心して登校できる環境を整える。その上で、テストも活用しながら不得意な点の克服を助け、長所を伸ばす。

 そうした教育の基本に沿って対策を徹底できているか。競争を強調する前に省みるべきだ。

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