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 統計不正問題をめぐる国会審議で、野党側が求めてきた厚生労働省の大西康之・前政策統括官の衆院予算委員会への招致が実現した。

 大西氏の招致は真相究明の一歩に過ぎない。過去の経緯を知る当事者なども呼び、国会は引き続き解明に努めるべきだ。

 今回の統計不正が発覚したのは昨年12月13日、総務省の統計委員会が、毎月勤労統計で本来は全数調査のはずの大規模事業所のデータに不審点があることを指摘したことがきっかけだ。

 厚労省の統計部門の責任者だった大西氏は、この時期に不正を把握し、5日後に次官級の幹部らに報告したことなどを説明した。

 ならばこの頃には、問題が単なる統計調査のルール違反にとどまらないことを厚労省は認識できたはずだ。雇用保険や労災保険の過少支給の可能性に気付いたのは年末の27日になってからだと言うが、本当なのか。この間の対応に問題はなかったのか。引き続き解明が必要だ。

 せっかく参考人を呼んでも、形だけでは意味がない。象徴的なのが、厚労省が設置した特別監察委員会の委員長を務める労働政策研究・研修機構の樋口美雄理事長との質疑だ。

 野党は、監察委による検証の中立性・客観性が問われているとし、どうして職員らへの聞き取りの約3分の2が厚労省職員による「身内」の調査になったのかなどをただした。しかし樋口氏は「予算委には(機構の)理事長として呼ばれたと認識している。答弁は差し控えたい」と繰り返した。

 参考人招致にあたり、与党が「独立行政法人の理事長として」と条件を付けたためだ。野田聖子・衆院予算委員長も度々、「理事会で決めたことですから」と野党の質問を制した。

 わずか1週間で報告をまとめるような拙速で、かつ「身内」主導の検証になった経緯は、解き明かすべき焦点の一つだ。改めて監察委の委員長として招致すべきである。

 統計不正問題は長年、厚労省内で放置されてきた。組織的な隠蔽(いんぺい)はなかったのかなど、明らかにすべき点はほかにも多い。

 それなのに、大西氏の招致をこれまで拒んできたことを含め、この問題の解明に対する及び腰の姿勢が、与党には目立つ。国会運営をめぐる野党との駆け引きに参考人招致を使い、真相の究明を妨げることは許されない。

 行政監視は国会の重要な責務だ。その重みを、与党も自覚するべきだ。

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