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 ■多民社会

 日本で学んだり働いたりする外国人が増えています。日本に住む外国人は260万人を超え、働く外国人は146万人。さらに外国人労働者を増やそうと、改正出入国管理法が4月に施行され、今後5年間に最大約35万人が来日します。私たちの仕事や生活にどんな影響があるのか。共生するにはどんな施策が必要なのか。日本に住む外国の人たちの声を聞き、みなさんと考えます。

 ■生活大変/なんか悲しい

 朝日新聞デジタルのアンケート「あなたは、日本に来てよかったですか?」に寄せられた声の一部を紹介します。

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 ●「いまは大学生だが、日本語学校は本当にめちゃくちゃです。憧れと夢を持って日本に来た語学学校生にはどんな生活が待っているでしょうか。不合理な値段と契約で提供される寮、進学準備の不協力さ、授業の残念さ。日本に来る前にはきれいな言葉ばかり並べるが、来たら現実は全然違う。結局来年度の学費に迫られ、バイトしか考える暇がなく、入試対策どころか、語学勉強の時間もありません」(東京都・20代男性 中国)

 ●「初めまして! 私は実習生として日本に参りました。来月、帰国する予定です。私にとって、日本に来られて、良かったです。3年間に日本で過ごしたことを全て忘れません(^ ^) 色々な言葉を言いたいですが、“日本のことが好きですし、ありがとうございます”と一つの言いたい言葉です」(山口県・20代女性 ベトナム)

 ●「10年以上日本に住んでいます。正社員研究者です。日本国籍を取得し、日本人妻、子供がいます。家族年収は1000万以上あります。それでも、チャンスあれば外国に移動考えることがあります。知り合いの外国人研究者はだいたい移動の計画、移動の考えがあります。最近友達は、カナダ及びドイツに移動しました。2人が幸せそうです。日本の生活はストレスが高い、安定じゃない、将来の保証がない、隠れている差別。日本がもっと素晴らしい国になって欲しい。みんな頑張りましょう」(愛知県・30代男性 そのほか)

 ●「日本の文化が好きだけど、生活は大変だと思います。今は、介護でバイトしています。自分の仕事は、せきにんはとてもおもい。みんなじゃないですが、お年寄りはきびしいです……いつもたたかれたり、わるぐちをはなしたりしています。もう我慢できません」(岐阜県・20代女性 インドネシア)

 ●「日本に来ましたよかった...かな 私は三世、おじいちゃん日本人です。ずっと一人暮らし。友だちもいないし、なんか悲しいです。すごくたいへんな仕事をやりました、イジメをもらいました、不安おおい、自殺のこと毎日考える。まだちゃんと勉強をしたい、いい仕事といい給料欲しい、友だち欲しい」(神奈川県・30代その他 アルゼンチン)

 ●「日本に住んでもうすぐ20年です。(1)日本で生まれた子どもたちはベトナム語が話せません。母語やその他の外国語が小学校から選択授業になったらいいのにと思います。外国語ができる人が増えたら、これから日本に来る人たちとコミュニケーションもしやすくなります。(2)技能実習生はみんな苦労しています。実質最低賃金以下なのに、ひどい労災になったという人もいます。会社が責任を取ってくれないケースもあります。日本人の労働者にも、同じことができますか? 受け入れるなら、いいとこ取りしないで、ちゃんと面倒見てあげてほしいです」(大阪府・30代男性 ベトナム)

 ●「日本はなかなか休みを取れにくい、外国人はたまに国へ帰りたい、1~2週間くらい でもなかなかできない」(千葉県・30代男性 インドネシア)

 ■外国人材奪い合い懸念

 東京から車で約2時間の茨城県鉾田市(人口4万7千人)。「農業王国」の同県内でも葉物や果物の栽培で知られ、農業産出額は780億円と全国の市町村で2位を誇ります。

 1月中旬、同市の農家、深作秀喜さん(59)のグリーンハウスでは、中国やベトナムから来た技能実習生が小松菜を収穫していました。深作さんは計5ヘクタールの農地を持ち、実習生11人が働いています。月収は手取りで14万円程度になるそうです。

 中国出身の程永強さん(30)は妻と娘を国に残し、3年前から働き始めました。来日するため業者などに80万円を払いましたが、中国でも農業をしていた程さんは「収入は中国の倍以上。勉強にもなるし、できるだけここにいたい」といいます。

 茨城県内の実習生数は全国5位の1万3千人で、農業・林業分野が最多。鉾田市には約2千人がいるとされます。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの分析では、同県の農業分野で働く20~30代の3人に1人が外国人です。

 深作さんの農場の売り上げは年間1億8千万円にのぼり、息子2人もそれぞれ農業法人を運営していますが、「求人を出しても人が集まらない。外国人抜きに日本の農業は成り立たない」。入管法の改正で、農業分野は今後5年間に最大3万6500人の受け入れが見込まれています。実習生の待遇に配慮し、ディズニーランドにも連れて行く深作さんは、全国の農家で人材の奪い合いが始まるのではと感じています。「彼らを人として大切にしない農家は淘汰(とうた)される」

 外国人材は賃金の高い都市部に集中するとの見方もあり、県も動き始めました。県雇用促進対策室は昨年12月以降、東京都内の監理団体を訪問。長内秀樹室長は「都道府県レベルの外国人材の獲得競争が始まっている。県が受け入れに積極的だという印象をアピールし、いい人材に来てほしい」と期待します。

 一方で、同県では実習生の失踪や不法就労も増えています。法務省入国管理局の統計によると、2017年に茨城県内で認知された不法就労者は2213人で、15年から3年連続で全国最多です。彼らはどこで、どんな生活を送っているのか。知人から「北海道で50人以上の不法就労の中国人がみつかった」と聞き、北へ取材に向かいました。(吉田美智子)

 ■野菜加工の現場にも

 茨城県産の野菜の加工にも、外国人実習生が関わっています。約50人を雇う県内の食品加工会社長は「日本人に負けないぐらい働く戦力で、貴重な仲間です」と話します。

 この会社はスーパーに並ぶ袋入りサラダなどを製造。材料の半分近くは県内産で、鉾田市からは大根などを仕入れています。この10年で売り上げが倍増。作業員も1.5倍に増やしましたが、「人手不足で、地元で新たに正社員やパートを雇うのが難しい。それが実習生を雇う背景です」と社長。実習生が失踪するケースもあり、「悪い誘いを防ぐため、どの国からの実習生かは言えない」。

 この会社では毎月、実習生らの誕生パーティーを開催。成人式も日本人社員の新成人と一緒に祝います。働き始めて3年目の20代女性は「職場は楽しいし、町は安全で、満足しています」と笑顔を見せました。

 取材の帰路、東京都内でコンビニに寄ると、この会社の袋入りサラダを見つけました。レジを担当するのは外国人でした。(長野剛)

 ■日本が発展するチャンス 日本国際交流センター・毛受敏浩(めんじゅとしひろ)執行理事

 日本の総人口は現在の1億2千万人から、2065年には8808万人、2100年には半分以下の5971万人に激減する見通しです。外国人材の労働力とAI(人工知能)などの科学技術を総動員してはじめて、超高齢社会を維持できるレベルと言えるでしょう。

 日本は19年、外国人労働者の受け入れにかじを切りました。改正入管法では、新たな在留資格を創設し、5年間で34万5千人の受け入れを見込んでいます。今年は「移民元年」と後世、認識されるでしょう。

 日本人の雇用が奪われるという懸念もありますが、ドイツのように職種ごとの受け入れ人数を決めて外国人に就労許可を与えるようにすれば、解消できます。韓国では企業が外国人の受け入れ前に一定期間、韓国人を募集する「労働市場テスト」を義務づけています。

 大切なのは、優秀な人材に定着してもらうために、介護や外食、建設など14業種で受け入れる「特定技能1号」から永住も視野に入れた2号への移行の道筋を明確に示すこと。外国人と共生するための「在留外国人基本法」も必要でしょう。彼らは使い捨てできる安価な労働力ではなく、地域社会の文化や風習を継承し、日本の将来をともに担う仲間と位置づける必要があります。

 中国をはじめ、アジア全体で人材獲得競争が始まります。社会の一員として受け入れる覚悟と姿勢がなければ、日本は外国人にとって魅力的な国ではなくなってしまいます。

 日本は遣唐使の時代から、異文化を積極的に取り入れ、文化や技術のイノベーション(革新)を引き起こしてきました。今回も外国人の受け入れによって日本が大きく発展するチャンスになるでしょう。(聞き手・吉田美智子)

 ◇来週17日は「みんなのニッポン?:2」を掲載します。

 ◇アンケート「あなたは、日本に来てよかったですか?」を12日までhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

 

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