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 カリブ海に面した南米のベネズエラは、美しい自然を誇る国である。国名の由来は諸説あるが、大航海時代に欧州人が「小さなベネチア」と呼んだのが始まりともいわれる。

 世界一と言われる原油埋蔵量を抱え、本来は豊かな国のはずだ。ところが近年、失政による混迷は深まるばかりだ。すでに国民の1割にあたる300万人が国外に逃れたという。

 最大の責任は、マドゥロ大統領にある。経済政策の失敗に加え、反政府派への弾圧を続けている。市民の流血もおきており、もはやこれ以上、統治を続ける資格はない。

 平和裏に収拾するためには、国民自身の手で公正に大統領を選び直すことが不可欠だ。マドゥロ氏は拒んでいるが、国際社会は新たな大統領選挙の実現へ向けて環境を整えるべきだ。

 この国は今、「大統領」が2人存在する事態になっている。マドゥロ氏が正統性を唱える一方、昨年春の大統領選の無効を訴えるグアイド国会議長が暫定大統領を名乗っている。

 米国とカナダ、ドイツ、フランスなどはグアイド氏を承認したが、中国やロシアなどはマドゥロ氏を支持している。国際政治で日ごろから続く、米欧と中ロの対立構図がここにも持ち込まれている。

 マドゥロ氏の前任であるチャベス前大統領は異色の指導者だった。「21世紀の社会主義」を掲げ、原油マネーで貧困層を支え、強い人気を誇った。

 マドゥロ氏は後継として2013年に就任した。だが、原油価格の低迷で物不足とインフレが急激に進んだ。その後、野党が多数を占めた国会を無効化し、昨年の大統領選では有力な反政府派候補を排除した。

 その政権基盤は軍部だが、市民に銃口を向けるような行動はあってはならない。軍内部では政権離反の動きも出ており、事態の先行きは不透明だ。

 中国とロシアは、マドゥロ氏の説得に動かねばならない。中ロとも自国の権益や対米牽制(けんせい)を考えているようだが、ベネズエラを自国の影響力を競う舞台に利用する態度は慎むべきだ。

 トランプ米大統領は軍事介入をほのめかすが、踏み切れば中南米に反米感情を広げ、事態を悪化させるだけだ。グアイド氏も、平和的に解決する姿勢を明確にする必要がある。

 飢えや病気なども広がり、ベネズエラ国民の窮状は極まっている。関係国は人道支援を急ぐとともに、国連で改めて協議を重ね、国民の手で新たな統治体制を築く道筋を描くべきだ。

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