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 人間の尊厳をどう考えているのか。それよりも金メダルや国威発揚が大事なのか。

 白血病と診断されたことを公表した競泳の池江璃花子(りかこ)選手について、桜田義孝五輪相がおととい、NHKの記者らに対し、「がっかりしている」「(五輪の)盛り上がりが若干下火にならないか、心配している」などと感想を述べたという。

 信じがたい発言だ。かねて閣僚としての資質が疑われてきた桜田氏だが、その任に堪えないことが改めて明白になった。

 きのうになって「配慮を欠いた」と発言を撤回したが、池江選手本人や家族、周囲で支える人を傷つけ、快復を願う多くの国民との間に、深い溝が刻まれたのは間違いない。野党が一斉に批判したのは当然だ。

 桜田氏の問題ある言動はこれが初めてではない。

 東京五輪・パラリンピックの基本的なコンセプトを知らず、大会の総経費や国の負担分について理解していないことが、国会答弁であらわになった。揚げ句に「事前通告がなかった」と野党に責任を転嫁。ところが通告を受けていたことがわかり、陳謝に追い込まれる一幕もあった。きのうも、就任から4カ月以上経つのに、五輪憲章を読んだことがないと認めた。

 あまりの無責任ぶりとレベルの低さに、野党も国民も怒りを通り越してあきれ、やがて慣れてしまい、この人にいくら言っても仕方がないと、さじを投げる。妄言・暴言を繰り返しながら居直る麻生副総理と、同じような状態になっていた。

 安倍首相はなお「適任」「職責を果たしてもらいたい」とかばうが、そんなことを言っていられる場合だろうか。

 五輪開幕まで1年半となり、準備は正念場を迎えている。経費は膨れあがり、最近になって大会中の交通渋滞対策として、首都高速道路の料金を上乗せする案が浮上した。人々に当初の想定以上の不便や我慢を強いることになるのがはっきりしてきているというのに、理解と支持を求める先頭に立つべき五輪担当相が、常識と乖離(かいり)した振る舞いを続ける。

 この人に任せて大丈夫なのか。そう思うのが自然だろう。

 本来、五輪担当相は国内対策だけでなく、各国の思惑や利害を受けとめて、その調整にも当たらなければならない重要なポストだ。ところがこの6年余りで5人の大臣が次々と就任し、存在感はほとんどない。

 首相がいう「適材適所」がいかにまやかしか、この一事をもってしても明らかだ。

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