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 ゲノム編集技術で作られる食品の取り扱いを検討してきた厚生労働省の部会が、報告書案をまとめた。いまパブリックコメントを募集中だが、議論の進め方が「スケジュールありき」で不安と疑問がぬぐえない。

 遺伝子をねらい通りに改変するのがゲノム編集だ。報告書案は、現にある遺伝子を切断した結果、塩基配列が1~数個変化しただけなら自然界でも起きる現象であり、「遺伝子組み換え」に当たらないとの立場をとる。法律に基づく安全性審査は不要とされ、厚労省は今後出す「通知」に従い、改変内容などを届けさせる方針だ。

 専門家には合理的な結論なのだろう。だが両者を分ける境界はあいまいだ。甘くて傷みにくいトマトや筋肉量の多いマダイなど、現在、応用研究が進んでいるものの多くは、審査の対象にならない可能性が高い。

 今回の議論は、昨年6月に閣議決定された政府の統合イノベーション戦略が、ゲノム編集食品について「今年度中に取り扱いを明確化する」と打ち出したのを受けて始まった。

 その直後にEU司法裁判所が「ゲノム編集作物も遺伝子組み換え食品に当たる」と、今回の報告書案と正反対の判断を示すなど、問題は複雑で、各国の対応も一様でない。ところが厚労省は、4カ月余の検討で結論を導きだした。消費者団体などの疑義は聞き置かれた。

 こんなやり方で社会の理解を得ることができるのか。消費者が不安を抱いたままでは、良い商品も普及しない恐れがある。

 遺伝子組み換え食品は安全性審査の義務があるが、それでも広く受け入れられているとは言い難い。約1万人を対象とした16年度の消費者庁の調査では、4割が「不安がある」と回答。安全性が確認されたものだけが流通していることを「知っている」「聞いたことがある」層でも、食品を回避しているとの答えが8割にのぼった。

 ゲノム編集食品についても、一片の「通知」で済ませるのではなく、輸入食品を含め、当局が検証に堪えるデータを確実に得られる仕組みを作る必要があるのではないか。そのうえで、集めた情報を消費者にわかりやすく届け、食べるか食べないかを自分の判断で決められるようにする。そんな環境を整えることが政府の務めだ。

 ゲノム編集とはいかなる技術で、いまどこまで到達し、どんな課題が残るのか。国、開発業者、研究機関は、消費者とのコミュニケーションを深める努力を怠ってはならない。

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