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 人口減と高齢化が進み、財政難は深刻さを増す。地球温暖化にも歯止めがかからない。

 持続可能な社会にしていくには、いまの制度や仕組みにメスを入れることが不可欠だ。しかし、痛みを伴う改革を嫌うのが人の常であり、政党や政治家も選挙での支持獲得が最優先でリーダーシップを発揮できない。

 どう意識を変えていくか。

 数十年後のこの地にあなたが暮らしていると仮定してください――。住民にこう呼びかけながら政策づくりに参加してもらう試みが、自治体の間で少しずつ広がりを見せている。

 いま受けられる便益が減っても、将来世代のための行動を選択する可能性が高まるのではないか。高知工科大と大阪大を中心とする研究者グループが「フューチャー・デザイン」(FD)と名付け、自治体と組んで実践している。

 盛岡市の南隣、人口2万7千人余の岩手県矢巾(やはば)町は、2060年をにらんだ町の総合計画作りにFDの手法を採り入れる。

 既に2回の経験がある。15年度は地方創生戦略、16年度は町営住宅と公共施設をそれぞれテーマに、公募や無作為抽出で選ばれた二十数人が、現世代と将来世代に分かれて議論をした。

 研究者の分析によると、やはり現世代は、子どもの医療費の無料化など、目の前の課題への対処を優先しがちだった。これに対し、将来世代役を務めた住民は、既存の枠にとらわれず、地域の特性を生かしたり、今後期待される技術の進展を取り込んだりして考える傾向が顕著だったという。

 参加者をどちらか一方に固定せず、両世代を経験してもらうやり方にすると、二つの視点が一人の中で共存し、「子や孫に住み続けてもらうためにはどうすればいいか」「いまを生きる人に責任がある」という意識の強まりが見られたともいう。

 他の自治体では、大阪府吹田市が16年度から、再生エネルギーの普及策や次期環境基本計画を検討する住民討議にFDを導入。ほかにも、京都府宇治市は集会所のあり方など地域コミュニティー問題を取り上げ、長野県松本市は地元の信州大と連携して新庁舎建設の基本計画を議論した。

 FDは理論も実践面も、まだまだ発展途上だが、政策づくりに一石を投じたと言えるだろう。社会保障制度改革やインフラの整備・更新など、国政の課題においても、将来世代の視点は重要性を増している。自治体から始まった実践を、幅広い政策づくりの糧にしたい。

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