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 2020年度から始まる大学入学共通テストで導入される英語の民間試験の課題などを議論するシンポジウムが10日、東京大・本郷キャンパス(東京都文京区)で開かれた。試験の開始が1年2カ月後に迫るなか、登壇者からは、民間試験の質の担保や情報開示が不十分だという意見や、大学入試センター試験並みの信頼性を確保するため、文部科学省が運営ルール作りに関与すべきだという声が出た。

 「1年前のシンポで、受験生が住む地域や家庭の経済力による格差の問題が指摘された。しかし、今になっても問題は何も解決していない」。全国高校長協会長を務める、笹(ささ)のぶえ・東京都立三田高校長は、講演でこう切り出した。各都道府県10校ずつ、計470校の高校にアンケートした結果、6割近くが「受験料は千円から3千円が妥当」と答えたことや、「地方では受験できる試験が限られる」「いずれの試験も受験料は高額で、経済弱者にはきつい」と、不安の声が寄せられたことを紹介した。

 シンポは、東大の「高大接続研究開発センター」が主催した。昨年2月に同様の趣旨で開いた際は、民間試験を使って英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測ることで、高校の英語教育の改革を目指す文科省の担当者も参加し、民間試験に懐疑的な立場の専門家と直接討論。高校や大学、研究者などから様々な問題点を指摘する声が噴出するきっかけとなった。

 そうした声がやまない中、今回のシンポも参加の申し込みが殺到した。2日で満員となり、当日は約420人が詰めかけた。南風原朝和(はえばらともかず)センター長は冒頭、共通テストで民間試験を使うことの課題のほか、センター試験の英語がどのように実施されてきたかについても議論すると述べた。

 センター試験については、長年かかわってきた大塚雄作・京都大名誉教授が、問題作成のプロセスやチェック態勢を説明。幅広い学力層に対応しながら平均点が目標の60点前後を維持していることなどを紹介し、受験者数が最も多い英語は総合的な学力を類推できる「扇子の要」だと位置づけた。

 大学入試センター研究開発部の荘島宏二郎准教授も登壇。過去のセンター試験の詳細な分析結果を紹介しながら、筆記とリスニングが学力を識別する際に互いを補完する関係にあることや、他の科目との相関構造について解説した。

 笹校長は、受験生に不要な負担や不安を与えないためには、民間試験がセンター試験並みの信頼性を担保することが重要だと指摘。試験実施団体に運営をただ委ねるのではなく、文科省が運営ルールの作成を指導することを求めた。また、実施団体には、時期や会場、受験料といった詳細をなるべく早く確定し、公表するよう要請した。

 シンポでは、英語教育の専門家も発言した。静岡大で英語教員の養成に携わっている亘理陽一准教授は、「民間試験を導入すれば、多くの高校教員が試験対策に進む可能性がある」と指摘し、高校の英語の改革につながるという文科省の狙いに疑問を投げかけた。また、東大や名古屋大などが、出願にあたって民間試験の成績を必須とせず、高校側が生徒の英語力を証明した書類でも認める点については、「現状では生徒の英語力を判定するには経験が足りず、酷だ」とした。

 山口県鴻城高校で英語を教える松井孝志教諭は、同じようなレベルとされていても、民間試験ごとに問題の内容や試験時間などが大きく異なる点を紹介。分析や評価ができるよう、民間試験が問題や解答を公開すべきだとした。(増谷文生)

 <訂正して、おわびします>

 ▼18日付教育面「共通テスト巡り 課題探るシンポ」の記事で、松井孝志教諭の所属高校が「私立宇部鴻城高校」とあるのは「私立山口県鴻城高校」の誤りでした。

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