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 NHK広報局の職員として、公式ツイッター「NHK_PR」の「中の人」をやっていました。

 NHKのイメージって、どんな感じです? 堅くて、真面目で、面白くない。そんな先入観をツイッターで変えたいと思ったんです。

 まず考えたのは、キャラ設定。かしこまった企業としての発信ではなく、そこに普通の人がいて、日常の会話をやっているイメージです。真面目で、ちょっと堅いところがあって、かつユーモアや優しさがある。僕が理想とするNHK像です。

 「今年の紅白歌合戦の出場者が発表されました」とか書いても、面白くない。会話をして、フォロワーと深いつながりのある「友達」になりたかったんですよね。ダジャレを言ったり、狂気じみたことを交ぜたりしていく。そのうち、ユルい企業ツイートとして「軟式アカウント」と呼ばれるようになりました。

 でもNHKだから、「ふざけすぎだ」とお叱りは常にあって。炎上も覚えていないくらい経験しました。

 東日本大震災のときには、本当に悩むことがありました。

 僕は震災初日から、ツイッターでひたすら情報を伝えていたんです。でも地震から4日経つと、ツイッター上は罵詈(ばり)雑言があふれるようになりました。みんながイライラして、怒りをぶつけ合う。

 想像してみたんですよね、自分が避難所にいて、何か情報がほしくてツイッターをのぞいたら、罵詈雑言が流れている……。すごくつらいだろうなって。

 だから、宣言したんです。「今後、できる限り日常的なユルいツイートをします」。すごく悩みましたよ。前の日から何時間も文章を考えて、友達にも相談して。批判が殺到するのはわかっている。だけど、誰かがかじを切らないと止まらない。

 いや、反応はすごかったです。罵詈雑言が全部こっちに向いてくる。ただ、東北の人から「久しぶりに笑いました。ありがとう」ってきたんで、それで、もういいやって。

 ツイッターを続けて、物事に動じなくなりました。世の中ってこんなにも同時に色んなことを考えている人がいるんだと体感して。真逆の意見がいくらでもきますから。

 ツイッターって本当は、受信ツールなんですよ。世の中の色んな声、本来届くことのない小さな声が残る。それは大事だなあと思います。(聞き手・高野遼)

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 あそう・かも 作家 1971年、神戸市出身。2004年にNHK入局。広報局で公式ツイッターを始め、大きな話題となる。在職中に作家デビューし、14年に退職。著書は「伴走者」(講談社)など。

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