[PR]

 毎月勤労統計の不正が発覚するきっかけとなった昨年1月の調査手法の変更に、首相官邸の意向が影響したのかどうか。国会で追及が続いている。

 見直しは、統計の精度を高めるためのものだ。首相も、専門的な見地から行われたと強調している。しかし、その過程が不透明で疑念を持たれたままでは、統計の正確さや政策への信頼を傷つけかねない。

 政府・与党は、野党の求める参考人招致や資料要求に協力し、説明を尽くすべきだ。

 問題となっているのは、勤労統計のうち抽出で行われている中規模事業所の調査だ。以前は2~3年ごとに調査対象を総入れ替えし、その影響を過去にさかのぼって補正していたため、すでに発表されている統計の数値が変動する課題があった。

 厚生労働省は15年6月に入れ替え方法の見直しに向けた検討会を立ち上げたが、8月の取りまとめ素案は「現在の総入れ替え方式が適当」だった。それが9月の検討会で一転、「入れ替え方式は引き続き検討」になり、厚労省幹部は「部分入れ替えを検討したい」と表明した。

 9月の会合の2日前に、この厚労省幹部は首相秘書官と面会し、その日のうちに、検討会報告の文案が「引き続き検討」に書き換えられたことが判明している。同じ日に同省から検討会の座長に、部分入れ替えの検討を求める意見が外部からあったとメールで伝えられた。座長にはその10日前にも、同省から「官邸関係者に説明している」とのメールが送られていた。

 厚労省の元幹部は国会で、秘書官が部分入れ替えに言及したことは認めたが、報告書の書き換えは面会の前に部下に指示してあったとして、秘書官の影響を否定した。誰がそんな説明に納得するだろう。

 厚労省は昨年1月、部分入れ替え方式へ移行し、補正作業をやめた。同時に、産業構造や労働者数などの変化を反映させる「ベンチマーク更新」も実施した。これまでベンチマーク更新の際には、やはりその影響を過去にさかのぼって補正していたが、これも作業をやめた。

 後者の変更は統計委員会で十分議論されていない。しかし厚労省と総務省は統計委の意見を聞かないまま、この変更について「問題なし」との統一見解を出した。あまりにずさんだ。

 アベノミクスの成果と誇る賃金のデータが後になって変動するのは困る。そんな官邸の意向を優先し、見直しが粗雑に進められた面はなかったか。疑念を払拭(ふっしょく)する責任は政府にある。

こんなニュースも