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 働き方改革で5年後から医療機関の勤務医に適用される罰則付きの残業規制について、厚生労働省は、地域医療のためにやむを得ない場合などに、特例で年1860時間を上限とする案を検討会に示した。

 過労死認定の目安とされる「過労死ライン」を上回らないよう定められた一般労働者の「繁忙月で100時間未満、年960時間」を大きく超える。

 地域医療を守るために、本当にここまでの特例が必要なのか。今でも過労死が問題となっている医療現場で働く人たちを、この基準で守れるのか。厚労省は3月末までの取りまとめを目指しているが、拙速に進めず、議論を尽くすべきだ。

 一般労働者の残業時間の上限規制は今年4月から実施される。しかし地域医療への影響を考慮して、医師は適用を5年間猶予される。

 厚労省案では、一般の勤務医は「年960時間」を上限としつつ、救急病院などには特例を適用。対象となる医師には、健康確保のために連続勤務を28時間以下にする、次の勤務まで9時間の休息を確保することなどを義務付ける。

 集中的に技能向上のための診療を必要とする研修医や専門医を目指す医師にも同様の特例を認めるという。

 厚労省が参考にしたのが、勤務医の約1割が年約1900時間以上の残業をしているという16年の勤務実態調査だ。上位1割の是正であれば関係者の理解が得られやすいとの判断だ。

 だが、これは1週間分の調査結果を年間に換算したもので、実態を反映しているのか、疑問視する声もある。

 実情はどうなのか。残業規制の水準は地域医療にどんな影響があるのか。必要なデータを集め、議論を深めるべきだ。

 そもそも実態に規制を合わせるのでは、現状追認にほかならない。現状をどう改めるのかも検討を急がねばならない。

 勤務医の労務管理の徹底、業務分担の見直しなど、個々の病院での取り組みはもちろん必要だ。一方で、地域や診療科ごとの医師の偏在、病院と診療所の役割分担、分散している医療機関の集約化など、個別の努力では解決できない課題も多い。

 厚労省は、今の地域医療計画や医師偏在対策を前提に、残業規制の特例解消の時期を35年度末としているが、もっと前倒しできるよう、より踏み込んだ対策を考えるべきではないか。

 医師の過重労働に依存する医療の現状を改める。今回の改革をその一歩にせねばならない。

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