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 なんと無残な光景か。はっきりと示された民意を無視し、青い海に土砂が投入されていく。

 沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐる県民投票は、反対票が72%を超え、43万4273票に達した。玉城デニー氏が昨秋の知事選で得た過去最多得票を上回った。

 しかし、安倍政権は「予告」通り投票結果を一顧だにせず、工事を続行した。

 安倍首相はきのう、記者団に「投票の結果を真摯(しんし)に受け止め、基地負担軽減に全力で取り組む」と述べたが、「真摯に」という言葉が空々しく響く。

 政権を支える自民、公明両党は、県民投票を「自主投票」とし、組織的な運動を避けた。本当に辺野古移設が解だと信じるなら、根拠や見通しを具体的に示し、県民に支持を訴えるべきではなかったか。議論もせずに結果を黙殺するのは、民主的なプロセスとは言い難い。

 首相はきのうも、住宅地の真ん中にある普天間飛行場をなくすためには、辺野古の代替施設が不可欠だという考えを繰り返した。返還合意から20年以上たつとして、「これ以上先送りはできない」とも強調した。

 しかし、この事態を招いたのは、沖縄の人びとの過重な基地負担の軽減に取り組むという原点を忘れ、「普天間か辺野古か」という二者択一を迫る政権のかたくなな姿勢にある。

 普天間の危険性をいうなら、まずは米政府に対し、米軍機の運用をできる限り減らし、住民の安全を軽視した訓練を行わないよう強く働きかけるべきだ。県が長年求めてきた日米地位協定の改定も、正面から提起する必要がある。

 亡くなる直前に埋め立て承認撤回を表明した故翁長雄志(おながたけし)前知事は、2016年の沖縄慰霊の日の平和宣言でこう訴えた。

 「沖縄県民に、日本国憲法が国民に保障する自由、平等、人権、そして民主主義が等しく保障されているのでしょうか」

 こんな言葉を県知事に言わせる政権とは、何なのか。日米合意や安全保障上の必要性を強調し、明白な民意を無視し続ける姿勢は、日本の民主主義を危機に陥れている。

 「マヨネーズ並み」の軟弱地盤が埋め立て予定地に広がることがわかり、技術的にも、政治的にも、現行計画の破綻(はたん)は明らかだ。工事の長期化は避けられず、辺野古への固執が普天間の固定化を招くことになる。

 政権は速やかに工事を止め、県や米政府と協議に入るべきである。県民投票の結果を、転換の礎としなければならない。

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