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 今度こそは、という国際社会の期待に大きく背く再会だったといわざるをえない。

 ベトナムで開かれた2回目の米朝首脳会談は、事実上決裂して終わった。あれほど楽観していたトランプ大統領の言葉は何だったのか、空しさが漂う。

 米側は広く知られた核施設にとどまらず、独自に調べた施設の非核化も求めたという。しかし、北朝鮮側は一部の施設の見返りに制裁すべての解除を要求する傲慢(ごうまん)な条件を出した。

 トランプ氏が過剰な譲歩を控えたのは正しいとしても、そもそも溝が深すぎる。事前の準備の乏しさは否めない。

 国同士の問題の解決は本来、事務方の地道な交渉の積み重ねを要する。それを経ずにいきなり首脳会談に踏み切ったトランプ流の外交を本紙社説は「賭けに近い実験」と評した。

 その前回会談から約8カ月。非核化への道筋が今も見えない現状をみれば、「賭け」は危うい方向に傾いているのは明らかだ。交渉は今後も続けるというが、首脳間での物別れを軌道に戻すのは容易ではない。

 だが、もはや後戻りはできない。トランプ氏と金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長は前回、「朝鮮半島の永続的な平和体制」づくりを誓った責任がある。今度こそ事務方の協議を重ね、仕切り直しをめざすほかあるまい。

 金氏は核・ミサイル実験については今後も控えると述べたという。だが、国連の専門家による調査では、北朝鮮は開発をひそかに続けているとされる。

 そのうえで対米交渉に強気で臨む金氏は、米国の内政で苦境に立つトランプ氏の足元を見たのかもしれない。そもそも、核を本当に完全放棄する用意があるのか疑念は尽きない。

 このまま膠着(こうちゃく)状態が長引けば、結果として、北朝鮮が自称する核保有国としての地位固めにつながりかねない。非核化をめぐる交渉が核軍縮協議になれば、北朝鮮の思うつぼだ。

 昨年以来続いた関係改善の勢いは、今回でいったん滞るだろう。いずれ北朝鮮は米国批判を強めるかもしれないが、自らの態度を変えねば、孤立から抜け出せないことを悟るべきだ。

 朝鮮半島を緊張局面に戻すことは避けねばならない。そのためにも米国は迅速に米朝交渉を立て直す必要がある。

 会談後の記者会見でトランプ氏は、日本と韓国との連携に触れ、「築いてきた信頼を損ねることはしたくない」と語った。そう考えるのなら、今後は拙速な外交を改め、堅実で周到な朝鮮半島政策を進めてほしい。

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