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 県民に寄り添う。県民投票の結果を真摯(しんし)に受けとめる。その言葉が本心であるならば、行動で示して欲しい――。

 沖縄県の玉城デニー知事は、きのう安倍首相にそう迫った。

 当然の要請である。政府は辺野古の海の埋め立て工事をただちに中止して、県との話し合いに応じるべきだ。ましてや、今月下旬に予定している新たな海域への土砂投入など、到底認められるものではない。

 会談は、先日の県民投票の結果を伝えるために開かれた。あわせて知事は、二つの対話を呼びかけた。一つは、米軍普天間飛行場の地元が被っている負担の軽減策を話し合う会議(国、県、宜野湾市)の開催、もう一つは、在沖米軍基地の現況や今後について検証・協議する場(日米両政府と県)の新設だ。

 国際情勢の変化などに目をふさいで「辺野古移設が唯一の解決策」を繰り返し、結果として普天間の危険性も放置してきた政権に対し、問題解決に正面から取り組むよう促すものだ。

 しかし首相から前向きな発言はなく、逆に「普天間の状況を置き去りにするわけにはいかない」という言い方で、辺野古での工事を進める考えが改めて表明された。「寄り添う」「真摯に」といったきれいな言葉が、「本心」ではないことを示すものにほかならない。

 玉城知事が「対話」を重んじる背景には沖縄の歴史がある。

 第2次大戦で悲惨な地上戦を体験した沖縄は、戦後、米軍政下におかれ、本土に復帰しても過重な基地負担を強いられた。人権、自治を獲得するため、米軍や日本政府と闘うときの最大のよすがになったのは、言葉だった。強大な相手でも、対話を通じて物事を解決に導こうという価値観は、いまも県民に受け継がれているという。

 県民投票でもそのことが示された。実施のための署名集め活動の中心になった元山仁士郎さん(27)は、世代や地域、賛否をこえた話し合いの必要性を説いた。投票への不参加を一時表明した市長たちにも面会を求め、意見を交わし、曲折を経て、全県投票にこぎ着けた。

 朝日新聞の最近の取材に、玉城知事はこう語っている。

 「対話で互いの考え方を確認できる。隔たりのある問題だからこそ、どこに隔たりがあるのか、越えられない壁なのか、埋められない穴なのかを考え、そこを避けることができる」

 力でなく、対話によって解決の道を探る。いま政府に何より求められることであり、その姿勢なしに将来の展望はない。

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