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 やがて「検査を受けるのが当然」になり、さらには安易に命が選別される事態を招かないか、強い懸念が残る。

 胎児にダウン症などがあるかを調べる新型出生前診断について、日本産科婦人科学会が実施できる施設の条件を緩める指針改定案を公表した。現在、遺伝の専門外来を備えた大学病院や総合病院など全国に92の認可施設があるが、研修を受けた産婦人科医が常勤するなどの条件を満たせば、それ以外でも診断できるようにするという。

 規模の小さなクリニックなどで、妊婦や家族に十分な情報提供とカウンセリングがなされ、疑問や不安にこたえることができるのか。検査結果が陽性だった場合、適切に対応できるのか。不安は尽きない。

 指針案はこれまで通り、検査について「医師が積極的に知らせる必要はない」「安易に勧めるべきではない」としているが、認可施設であることをPRするのは自由だ。検査件数が増えれば収入も増える。勧誘のような行為は起きないだろうか。

 条件を緩めようとする背景には、学会の指針に反して実施する認可外施設の存在がある。少なくとも十数カ所あるといい、▽検査対象は原則35歳以上の妊婦▽調べるのは三つの染色体異常に限る、といったルールを無視したり、料金の安さを強調したりする例があるという。

 だが詳しい実態は不明で、トラブルの有無や妊婦・家族への対応などわからないことが多い。要件緩和によって、認可外施設で検査を受ける人が減るのかも疑問だ。認可施設を増やす改定をする前に、まずは事実を把握し、社会で認識を共有することが先ではないか。

 学会もこれまで手をこまぬいてきたわけではない。関連学会とともに認可外施設の医師や検査会社に中止を求め、妊婦にも注意を呼びかけてきた。それでは効果があらわれないというのなら、国レベルで対策を講じることを検討すべきだ。

 障害のある人の生きる権利や生命倫理がからむ問題だ。医師だけでなく、いろいろな分野の専門家や当事者も交えて議論を深め、合意形成を図る必要がある。

 陽性が確定した9割以上が中絶を選択しているというデータがある。この数字は、障害のある人や家族が置かれている厳しい状況を映す鏡ともいえる。指針の改定が、結果としてこうした現実を追認し、多様な「生」を認めない息苦しい社会へとつながっていく恐れはないか。目を凝らす必要がある。

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