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 国力拡大に突き進む強気一辺倒の姿勢が、やや陰った。経済だけでなく自らの外交や社会を直視し、ひずみを正す時期が来たと考えるべきだ。

 中国の全国人民代表大会(国会に相当)が北京で始まった。李克強(リーコーチアン)首相が読み上げた政府活動報告には、経済の減速と共に募る危機感がにじんでいた。

 「わが国の発展が直面する環境は複雑さと厳しさが増している」「激闘に向けた準備を」と国内の引き締めを求めた。

 2019年の成長率の目標は「6~6・5%」。中国としては前年の「6・5%前後」からの引き下げである。

 成長の鈍化は、中国政治に重い意味を持つ。共産党一党支配の正当性は、改革開放から40年間、中国を世界第2の経済大国にした事実にこそあるからだ。

 最近の米国との貿易摩擦がマイナス要因なのは間違いない。だが、中国が直面している諸問題を見つめれば、対米関係だけで語れないのも事実である。

 根本的には、持続可能な成長のための構造改革を十分に進めてこなかった問題が大きい。首相は今回も、大型減税や公共投資の拡大などを打ち出したが、国有企業と党との癒着などに切り込むかは見えない。

 中国は自由経済の恩恵を受けて成長した国であり、国際社会に自由貿易の原則を唱えている。ならばなぜ、党が企業をコントロールし続けるのか。

 一方で、貧富の格差を緩和させる再分配の施策は不十分なままだ。急速に進む少子高齢化に向けて、社会保障制度も整備されていない。貧困に置き去りにされた国民が、不満を表現する権利も抑圧している。

 報告は対外的には、対米交渉を意識した柔軟姿勢が目立つ。「約束の履行」「外資の保護」を確認しつつ、技術覇権をめざす政策と目される「中国製造2025」には触れなかった。

 当面の摩擦を和らげるための一時的な戦術なのか、それとも国際融和の意義を認める変化の兆しなのか。それは今後の中国の行動を見守るしかない。

 首相はこれまで、中国が主導する「新型国際関係」との言葉を多用してきたが、今回の報告では「多国間主義と国連を核心とする国際体系」の重要性を訴える言葉に言い換えた。

 自由経済と国際協調。その秩序がなければ、中国の持続可能な発展はない。国内においては格差を縮小し、市民の権利を尊ぶ社会に転じない限り、国の安定はない。それらの現実を踏まえた改革こそ、党指導部が取り組むべき「激闘」であろう。

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