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 いったい何のためなのか。中国の国防予算が今年もまた、大幅に増やされる。

 前年から7・5%アップの1兆1898億元。日本円にして約19兆8千億円にのぼる。

 国防費の規模としては米国に次ぐ世界第2位であり、日本の防衛予算の4倍弱に達する。

 伸び率は前年から0・6ポイント下がったが、それでも経済成長率を上回る。景気の減速に悩むなかでも軍事は別格の扱いだ。

 中国政府は防衛目的だとし、「脅威ではない」と繰り返す。しかし、これまでの強引な海洋進出などを振り返れば、その言は説得力に欠ける。国際社会の不安が高まるのは当然だ。

 予算の内訳は発表されず、不透明のままだ。多くは最新兵器の開発や配備に使われている。現在、空母は旧ソ連製の1隻だが、近く初の国産が就役し、3隻目も建造中という。宇宙やサイバー分野でも、軍が急速な技術開発を進めている。

 南シナ海では、軍事拠点化を否定していたはずなのに、埋め立てた岩礁を次々に武装化している。身勝手に現状を変更し、法の支配の原則を顧みない行動は強く非難されるべきだ。

 「一帯一路」構想をめぐっても、世界各地への経済的進出を足場に、安全保障分野で覇権的な動きを強めるのではないか。そんな指摘が後を絶たない。スリランカなどでは、中国が使用権を得た港湾が軍事転用されるとの見方がでている。

 中国は、日本などから侵略を受けた屈辱の近現代史を持つ。二度と同じ目に遭わないために強い軍事力を持ちたい、との思いを中国人の多くが抱いているのは事実だろう。

 だが、この急激な軍拡は自衛の範囲を超えている。アジア太平洋地域が軍拡競争に陥り、安定が崩れれば、勝者は誰もいない。グローバル経済の時代に、強兵政策にいびつな国力を注ぐのは愚行である。

 むしろ中国は責任ある大国として、軍縮を主導する立場にあることを自覚すべきだ。

 米国とロシアは最近、中距離核戦力の全廃条約からの離脱を宣言した。背景には、中国を抜きにした古いルールの意義を問わざるをえない現実がある。

 「核なき世界」へ向けて、新たな核軍縮の多国間枠組みは必要であり、その取り組みに中国は背を向けてはならない。

 日中関係は改善の方向にあるが、安保分野の交流はまだ不十分だ。中国海軍創立70年の観艦式に、海上自衛隊の参加も検討されている。こうした機会を積み重ね、信頼醸成を深めたい。

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