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 背に腹はかえられぬ。それが多くの関係者の率直な思いだろう。法律家を養成する法科大学院と、司法試験のあり方を見直す法案が閣議決定された。

 大学の法学部を3年で卒業して法科大学院(2年)に進む「法曹コース」を新設したうえで、大学院在学中に司法試験を受けることも認める。受験資格を得るまでの期間をいまより2年短縮するのが柱だ。

 背景には法科大学院を取りまく厳しい状況がある。

 法律家の量と質を確保することを目的に、法科大学院制度は04年に始まった。受験技術の習得に走りがちだった旧司法試験の反省を踏まえ、学ぶ「プロセス」を重視し、幅広い視野を持つ人材の養成をめざした。

 ところが大学院が乱立したため新司法試験の合格率は低迷。不振校の撤退が相次ぎ、さらには法律家を志す層の減少という事態を招くに至った。

 処方箋(せん)づくりは容易ではないが、時間的・経済的負担の重さが法科大学院が敬遠される一つの要因であるのは事実だ。これを軽減して再生を図ろうという考え自体は理解できる。

 とはいえ学生、教員が早期合格のみにとらわれれば、大学院設立の理念が脇に追いやられてしまう恐れがある。そうならぬよう、関係者にはカリキュラム編成、成績評価、進路指導などで一層の工夫が求められる。

 現場の努力では解決しがたい問題もある。法科大学院に行かなくても司法試験の受験資格を得ることができる「予備試験」の存在だ。もとは経済的事情などから大学院に進学できない人を想定した措置だったが、いまや試験に強い学生が法曹になる近道と化している。

 「プロセス重視」を言うのであれば、予備試験コースはあくまでも例外と位置づけ、受験資格に一定の制限をかけたり、合格基準を見直したりするのが必須だ。ところが今回、政府はそこまで踏み込まなかった。

 法曹コースのあり方こそ文部科学省の審議会のテーマになったが、それ以外の施策については、議論が錯綜(さくそう)して収拾がつかなくなるのを恐れてか、オープンな場での検討・調整が行われなかった。この密行主義がゆがみを残した法案を生んだのではないか。国会は関係者を広く招致するなどして、さらなる改革に資する審議をしてほしい。

 虐待問題を始めとする福祉との連携、多様化・複雑化する国際ビジネスや労働紛争への対応など、法律家への期待は高い。それを担う人材を育てることは社会の大きな課題である。

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