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 春闘の回答が始まった。出足は低調だ。これでは、家計消費は増えず、先行き不透明な景気の足をさらに引っ張る。経営側は、働き手の要求に積極的に応えるべきだ。

 これまで相場の先導役になってきた自動車や電機大手では、ベースアップ(ベア)額が昨年に及ばない回答が目立つ。人手不足が著しい業界では前年超えのところもあるが、総じて見れば、企業側には賃上げに慎重な姿勢がにじむ。

 昨年末以降、中国への輸出が落ち込みはじめ、6年続いた景気が下降局面に転じた可能性がでている。確かに、米中の貿易摩擦もあり、過度の楽観はできない。業種や個別企業によって、経営環境にバラツキも生じているだろう。

 だが、日本企業全体でみれば、利益水準は依然極めて高い。一方、過去5年、賃上げ傾向が続いたとはいえ、物価上昇分を差し引いた実質賃金は横ばい程度で、景気回復の果実は十分には還元されていない。

 月々の給与の上昇が、景気回復にある程度後れをとることは理解できる。だが慎重姿勢を続けた揚げ句、景気への暗雲を認めるや否や、先取り的に賃上げを抑えるのであれば、景気循環を繰り返す度に働き手への配分が落ち込みかねない。

 適正な配分の観点に加え、マクロ経済の安定にとっても、着実な賃上げは不可欠だ。賃上げ→内需拡大→企業の好業績、という循環が生まれなければ、デフレ脱却もおぼつかない。個別企業にとっても、人手不足が続く中で人材を確保し、成長を続けるには、賃上げを柱にした処遇改善が必要なはずだ。

 中小企業や非正規社員を含め、交渉の本格的なヤマ場はこれからだ。労働組合側には、賃上げが社会的にも求められていることを踏まえ、粘り強い交渉を望みたい。

 労組の中央組織である連合は、春闘の闘い方を変えつつある。ベアだけでなく賃金の水準に注目するという方向だ。先導役の大手企業がベアを獲得し、中小、非正規がそれに続くスタイルでは、労働者間の格差が縮まないからだという。

 中小、非正規の底上げや格差縮小は確かに必要だ。戦術面での柔軟な工夫もあっていい。だが、企業の業績が好調であるにもかかわらず、全体的な賃上げ水準が下がるような結果に終わるのであれば、本末転倒だ。

 労働側の力を集中し、社会的な注目の中で交渉力を高めるという春闘の原点を、連合は改めて確認してほしい。

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