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 土壇場で仕切り直しとしたこと自体は妥当だ。肝心なのは、混乱を招いた責任をどれだけ自覚し今後に生かせるかである。

 政府は今国会への著作権法改正案の提出を断念した。ネット上にある漫画などの海賊版への対抗策とされたが、多くの批判を受けて自民党も慎重姿勢に転じた。参院選を控え、紛争の芽は極力摘んでおきたいという思惑も働いたとみられる。

 論議を呼んだのは、著作物をネットからダウンロードする行為について「違法」とする範囲を拡大することの是非だった。現在は、著作権を侵害している映像と音楽だけが対象だが、政府はこれを、漫画や論文、写真など、すべてのコンテンツに広げる考えを打ち出した。

 自分限りの資料やメモとして著作物をダウンロードすることは、日常的に行われる。そこに広く違法の網がかかれば、ネット利用の萎縮を招き、知る権利や表現の自由を脅かすとの懸念が、学者やユーザー、さらには当の漫画家らから示された。

 政権にとって想定外の展開は政権自身が招いたといえる。

 海賊版対策の目玉として唐突に表明したサイトブロッキング(接続遮断)が、通信の秘密を侵すとの理由で昨秋に頓挫すると、かわってダウンロードの違法化を構想。通常国会に間に合うよう文化審議会での検討は3カ月余で打ち切られ、「あまりに拙速」との批判が出た。文化庁の説明資料が、反対や疑問の声をことさらに小さく見せているとの指摘も持ち上がった。

 政府は、▽著作権を侵しているものだと明確に認識しながらダウンロードする行為だけ規制する▽刑事罰を科すのは継続反復して行った場合に限る――と火消しに努めた。だが説明不足は否めず「不安が不安を呼ぶ悪循環」(自民議員)に陥った。

 ネットによる情報収集が当たり前になっている現実と、めざす政策との間に大きな隔たりがあるのに、それを埋める努力や工夫を欠いたことが、最終盤での破綻(はたん)につながった。

 参院選後に議論は再開されるが、反省を踏まえた慎重な対応が必要だ。海賊版対策は法規制がすべてではない。違法サイトへの広告出稿の取りやめや、逆に広告モデル型の正規の無料閲覧サイトを開設する試みも始まっている。多角的な視点からの検討が欠かせない。

 情報の流通を担保しつつ、権利者を守り、豊かな文化を育むにはどうすべきか。デジタル時代の著作権をめぐる課題はたくさんある。今回の混迷を丁寧な議論を尽くす出発点としたい。

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