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 景気拡大が続いているのに、財政赤字がふくらむ異例の事態だ。このままでは世界経済のリスクになりかねない。

 トランプ米大統領は、2020会計年度(19年10月~20年9月)の予算教書で、連邦政府の財政赤字が1兆1010億ドル(約122兆円)となる見通しを示した。

 政権肝いりの大型減税で税収は抑えられる一方、歳出は拡大。軍事関連費を前年度より約5%多い7500億ドルに増やす。政府機関の一部閉鎖につながった米メキシコ国境の壁建設費としても、改めて86億ドルを提案した。財政赤字は19~22年度の4年連続で、1兆ドルを超える見通しだという。

 1兆ドル超えの財政赤字は、金融危機による深刻な不況とその後遺症に苦しんだ09~12会計年度以来の高い水準だ。

 しかし、「よりよい米国」との題がついた予算教書は、きわめて楽観的だ。10年間は年率3%前後の経済成長が続くと想定し、今後15年で財政赤字は解消できるとしている。

 対照的に米議会予算局は、20年以降の成長率は2%以下に減速し、財政赤字は予算教書の想定より悪化するとみる。より現実的な見方であろう。

 予算教書は大統領の提案という位置づけにすぎず、連邦政府の予算は議会がつくる。心配なのは、その議会でも歳出圧力が強いことだ。

 下院の過半数を占める野党・民主党では、社会保障の拡大を求める声が強い。一方、上院を握る与党・共和党は国防費の積み増しでトランプ氏に同調しそうだ。

 議会が「ねじれ」状態にあるだけに、壁建設費をめぐる対立で米政府機関が閉鎖に追い込まれたような混乱も、再燃しかねない。法律で定められた政府債務の上限について、引き上げで与野党が合意しなければ、やがて政府の資金繰りが滞る可能性もある。

 オバマ政権時代には、債務上限の引き上げをめぐる議会内の対立などを背景に、米国債の格付けが引き下げられ、世界の金融市場を揺らした。同じ轍(てつ)を踏んではならない。

 折しも世界経済は不透明感を増している。その一因は、トランプ氏が中国に貿易紛争を仕掛けたことにある。

 これ以上、米国が世界に不安を広げることは許されない。共和・民主の両党は債務上限を引き上げて当面の安定を図ったうえで、将来的な財政赤字削減の道筋を描くべきだ。それが超大国の責務である。

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