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 白人と非白人との闘い。犯行声明には、そんな危機意識がつづられていた。憎悪に満ちた世界観を生んだ土壌は何だったのか、考えざるをえない。

 ニュージーランド(NZ)の中核都市クライストチャーチで痛ましい事件がおきた。イスラム教の礼拝所を武装した男が襲い、多数が殺傷された。

 逃げ惑う人々を銃撃する様子を、自ら撮影してネット中継した。自分の行動を広く誇示したい衝動があったのだろうか。まったく異常な犯罪である。

 詳しい動機や背景は今後の捜査を待つほかない。ただ、これまでに伝えられた情報を踏まえると、昨今の世界に広がる排斥の思想が影を落としている公算が大きい。

 起訴された男は28歳で、豪州の地方都市出身だ。白人住民が大半の地元を出て、20歳前後で旅を始めた。犯行声明によれば、欧州で多くの非白人の移民を目撃し、「侵略者」への反撃を思い立ったという。

 急速にグローバル化が進むなかでも残念ながら、白人の優越を信じる思想は一部に根強い。加えて、最近の欧米では政治家たちが様々な社会問題を移民問題にすり替えて論じ、支持獲得を狙う動きが目立つ。

 トランプ米大統領は、中南米系移民を犯罪者呼ばわりしてきた。米国内の白人至上主義に理解を示すかのような発言もあった。今回の事件の被告は、そのトランプ氏の支持者だという。

 被告の母国豪州は、1970年代に白豪主義から多文化主義へとかじを切った。しかし、2001年の米同時多発テロ後から空気が変わり、近年は極右政党が「イスラム排斥」を掲げて存在感を示してきた。

 多様性を拒絶し、不寛容がはびこる世界に、平和な未来はない。人種、宗教、信条などをめぐる差別や分断の連鎖を止め、国民統合の施策を進めることが政治の本来の務めのはずだ。

 事件がおきたニュージーランドは人口約500万だが、近年は毎年、人口比1%超の移民を受け入れており、有数の寛容な国として知られる。

 アーダーン首相は、銃規制の強化を約束した一方、スカーフ姿で礼拝所を訪れた。支援を申し出たトランプ氏からの電話には「あらゆるイスラム教徒のコミュニティーに同情と愛を示してほしい」と答えたという。

 自然が美しく、治安の良いニュージーランドには、留学や観光などで多数の日本人も訪れている。事件がもたらした悲しみに心を寄せ、分断のない世界への決意を新たにしたい。

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