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 東日本大震災で被災した岩手県沿岸できのう、163キロが1本の線路でつながり、第三セクター三陸鉄道のリアス線が走り出した。鉄道とともに、地域はどんな将来を歩むのか。

 もとは三つの路線で、三鉄の南リアス線と北リアス線をJR山田線が結んでいた。震災後、三鉄は国費で復旧し、2014年に全線が再開。山田線は、JR東日本がバス高速輸送システム(BRT)にすると提案し、地元は鉄道の存続を求めた。時間はかかったが、JRが鉄道として復旧して、経営を三鉄に移すことでまとまった。

 地元の人が乗りやすい工夫をした。かさ上げした区域にある陸中山田駅の周りには、住民も参加して議論を重ね、スーパーや銀行、飲食店、子どもたちが企画した図書館が集まる。

 住宅街の近くには、新たな駅ができた。通学や通院以外にも気軽に乗れるようにと、休日用のお得な切符もある。

 観光客の利用もかぎだ。ラグビーの国際試合をはじめ、当面はイベントが次々にある。岩手大学などの学生は、駅を降りて歩いてもらう「魅力再発見MAP」を、従来の三鉄区間に続いて山田線区間もつくるという。

 でも、現実はそう甘くない。

 沿岸地域の人口は40年に震災前の3分の2の18万人に減り、高齢者が4割となる見通しだ。ほとんどの人は車で移動する。無料の三陸沿岸道路は線路にほぼ並行して整備され、開通区間が続々と延びている。

 乗客の約1割を占める観光団体客も、開業直後の盛り上がりがいつまで続くかわからない。三鉄をモデルにした13年放映のドラマ「あまちゃん」後をピークに、客数は右肩下がりだ。

 三鉄はこれまで20年以上も赤字経営で、自治体の税金に頼る。JRからの30億円の移管協力金は、計画では20年間でなくなる。自治体が目標に挙げるノーマイカーデーや、企業と協力した企画列車など、地道な努力を重ねることが第一歩だ。

 人口減で地域の税収も減少するなか、災害公営住宅など新たにつくったインフラにも、この先、維持にはお金がかかる。被災地に共通する課題だ。

 津波であらゆるものが寸断され、がれきが覆った直後、三鉄の無料の復興支援列車は、人々とともに安心と希望を運んだ。

 「鉄道がなくなれば地域は衰退する」との危機感から鉄路を残した選択は、正しかった。そう次世代が誇れるよう、「課題先進地」から「課題克服の先進地」へと前進できるか。知恵を出し合いたい。

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