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 米国の大統領選挙と民主主義の歴史に、深い汚点が残った。大統領個人の「身の潔白」で済むような話ではない。

 2016年の大統領選の際、ロシアが米世論に影響力をふるい、トランプ陣営もそれを利用したのではないか――。いわゆる「ロシア疑惑」をめぐる特別検察官の捜査が終わった。

 2年間に及ぶ捜査の結論としては、トランプ氏の犯罪を立証するような事実は見つからなかったという。先月に就任したばかりの司法長官が、議会に報告する書簡を出した。

 長官は議会への報告を、一部にとどめており、詳細が国民に十分に示されたわけではない。捜査の結果はできる限り公開するのが筋だろう。

 焦点であるロシア政府とトランプ氏の共謀について、証拠は出なかったとされる。しかし、忘れてならないのは、ロシアによる選挙介入があった事実そのものは動かないことだ。

 対立候補のクリントン氏陣営や民主党本部のコンピューターから情報が盗まれていたほか、社会を攪乱(かくらん)するような情報がネットに流布されていた。民主主義への重大な攻撃があったことを、捜査も結論づけている。

 ロシアがトランプ氏に肩入れした工作が、選挙結果にどう影響したのかを量るのは難しい。だが大統領は本来、自身の正統性も傷つけかねない外国政府の振る舞いを非難し、真相解明を先導すべき立場だ。

 ところがトランプ氏は逆に、「魔女狩り」と切り捨て、自分をかばおうとしなかったFBI長官や司法長官を更迭した。

 そのため司法妨害の疑惑も加わったが、それについて今回の捜査は犯罪の有無の結論を出していないという。大統領に広い任免権がある以上、違法性の判断は難しい面もあろう。

 今回の結果を受けて、大統領の弾劾(だんがい)訴追は遠のいた。もともと疑惑捜査への国民世論は賛否二分されていた。これ以上の政治の混乱を見たくない国民の苦渋の思いもあるだろう。野党民主党幹部も、捜査を待たず弾劾を見送る方針を示していた。

 捜査に一区切りついたとはいえ、大統領の道義的、政治的な責任は大きい。何より改めるべきは、野党やメディアなどからの批判を拒絶し、正当な権力監視を封じようとする姿勢だ。

 米国が誇ってきた民主主義を立て直せるかどうかを占うのは、来年の大統領選だろう。法の支配を貫き、まっとうな批判と説明責任が果たされる長丁場の論戦の場を築けるか。米国の政治全体が問われている。

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