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 捜査機関の前のめりの姿勢に警鐘を鳴らす判決だ。

 運営するウェブサイト上に、他人のパソコンの演算機能を無断で利用できるプログラムを仕組んだとして、刑法の不正指令電磁的記録保管の罪に問われた男性に対し、横浜地裁は無罪を言い渡した。

 サイトを開くと、プログラムが動いて仮想通貨を獲得するのに必要な演算が始まり、対価は運営者が受け取る。閲覧者は何も知らずに利用されるだけで、17年秋にこのシステムが登場すると批判がわき起こった。

 一方で、動く原理自体は、ネットを見ていると画面に現れる広告の多くと変わらない。サイト運営を支える新たな収益手段として容認する声も聞かれた。

 そんななか警察が乗り出し、同様のサイトに関わっていた人々を相次いで検挙。うち1人が今回の被告だった。

 判決は、パソコンの電力消費量などサイトの閲覧者が受ける影響は軽微で、ネットユーザーの間でも賛否が割れていたことから、「社会的に許容されていなかったとはいえない」と判断した。そして、公的機関による事前の警告などもない状態でいきなり摘発したのは、「行き過ぎ」と批判した。

 納得できる結論だ。議論が熟す間もないうちの強制捜査は、いかにも性急だ。関係者の萎縮を招き、新しい技術の芽を摘むことにもなりかねない。

 むろん、プログラムの内容や被害の程度によっては刑事責任を問うべき場合もある。大切なのは、状況に見合った適切な対応と、どんな技術や運用であれば許されるか、社会で共通認識を形づくることだ。専門家や業界団体で一定のルールをつくることはできないだろうか。

 今回適用されたのは、コンピューターウイルスを取り締まる目的で11年に制定された罪だ。国会審議では対象となるウイルスの定義があいまいだとして、乱用を危惧する声が出た。それが現実のものとなった格好だ。

 首をひねる例は他にもある。「無限アラート」にリンクを張った疑いで、先ごろ兵庫県警は少年を含む3人を立件した。パソコン画面に同じ文章を何度も表示させるプログラムだが、それ以上の害はない。一種のいたずら行為に警察がどこまで介入すべきか、課題を残した。

 警察庁は2月、この罪に関して「積極的な取り締まり」を全国に指示している。サイバー犯罪への対応は重要だが、やり過ぎは社会にきしみを生む。判決が説くところを、捜査機関は十分認識しなければならない。

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