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 医療機関の勤務医に24年度から適用される残業時間の規制案がまとまった。

 一般の勤務医は過労死の労災認定の目安である「過労死ライン」を上回らない月100時間未満、年960時間を上限とする。ただし、地域医療のためにやむを得ない場合と、研修医や専門医をめざす医師など技能向上のために集中的な診療が必要な場合には、特例で年1860時間まで認める。

 「過労死ライン」の2倍近い残業を認めることに対し、厚生労働省の検討会では「非常識な数字」といった批判も出た。しかし一律に残業を制限すれば、地域で医療を受けられない患者が出かねないという医療関係者の声に配慮した。

 忘れてならないのは、本来改めるべきは、勤務医の過重労働に依存する、そうした地域医療の現状の方だということだ。

 最大の課題は、地域の医師不足などの構造的な問題である。その解消に本気で取り組み、特例なしで成り立つ地域医療を早期に実現しなければならない。

 厚労省は従来、研修医などの特例は将来的に縮減し、地域医療確保のための特例は35年度末を目標に終了するとしていた。しかし最終段階で「35年度目途に廃止することについて検討」との表現に後退した。

 35年度末という目標は、厚労省が進める地域の医療提供体制の見直しや医師偏在是正対策が前提だ。それなのに、こんなあいまいな表現しかできないのでは、自らその実現性に疑問符をつけたようなものではないか。医療機関の集約化や地域・診療科ごとの医師の偏在是正が思うように進まなければ、特例もずるずると続く。そんなことは許されない。

 医療現場ではこれまで、労働時間がきちんと管理されておらず、議論の前提となるデータも十分ではなかった。

 厚労省は今後、医療機関の業務の効率化や勤務環境改善への支援、労働時間などの実態把握に乗り出すという。そうした施策も踏まえ、特例で認める残業時間を適宜短くするべきだ。

 特例の対象となる医師の健康を守るため、連続勤務を28時間以下にする、次の勤務までに9時間の休息を確保する、残業が月100時間以上になる場合は産業医らが面接指導することなどを医療機関に義務付ける。

 疲労の状況を客観的にどうチェックするのか。ドクターストップがかかった場合に代わりの医師をどう確保するのか。実効性のある仕組み作りも課題だ。

 医療現場で働く人たちを守るために、必要があればさらに踏み込んだ施策を考える。それが厚労省の責任だ。

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