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 森友・加計問題などで、政権中枢への忖度(そんたく)が厳しく批判されているさなか、行政不信に拍車をかけた発言は許されるものではない。辞任は当然だ。

 本州と九州を新たに結ぶ道路をめぐり、安倍首相と麻生副総理の意向を忖度して予算をつけたと述べた自民党の塚田一郎・国土交通副大臣のことである。

 「国政の停滞を招くわけにはいかない」。塚田氏は辞任の理由をそう語った。政権・与党は国会審議や統一地方選への影響を最小限に抑えたいようだが、予算の背景に政治的な配慮があったとしたら見過ごせない。これで幕引きではなく、国民が納得できる説明が必要だ。

 首相の地元の山口県と麻生氏の地元の福岡県をつなぐ「下関北九州道路」は、1980年代後半にまとめられた全国の「海峡横断プロジェクト」6ルートの一つだ。福田康夫政権下の08年に凍結されたが、17年度に地元自治体と国による事業化調査が始まり、今年度から国直轄になった。6ルートのうち国が予算を出しているのはここだけだという。

 塚田氏は福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で、自民党の吉田博美参院幹事長から「これは総理と副総理の地元の事業だ」と言われ、自らが忖度して国の直轄調査にしたと語った。

 発言が問題になった後、「大勢が集まる会だったので、我を忘れて、事実とは異なる発言をした」と釈明したが、にわかには信じがたい。吉田氏との面会には、国交省の幹部職員も同席した。当時の記録を公開し、実際にあったやりとりを明らかにすべきだ。

 16年3月に与党議員が国交相あてに提出した早期実現を求める要望書には、首相も名を連ねていた。首相は「知らなかった」というが、調査を復活した経緯は、その妥当性も含め、検証されねばならない。

 この間、塚田氏を罷免(ひめん)するどころか、かばい続けた首相の責任は重い。忖度の事実がなかったとしても、地元への利益誘導で選挙戦での支持を集めようとしたことになる。塚田氏は麻生氏の秘書を経て政界入りし、麻生派に属する。首相が盟友への配慮を優先したとしたなら、不見識のそしりは免れまい。

 麻生氏はいまだに公文書改ざんなどの責任をとらず、財務省トップの座に居座り続けている。首相はそのことを問題視する風もない。

 首相は塚田氏の辞任を受け、「一層気を引き締めて、国民の負託に応えていく」と記者団に語った。政権のおごりや緩み、政治責任を軽視する体質が本当に改まるのか、厳しく注視し続けねばならない。

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