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 東京電力福島第一原発の事故から8年たつ今も、全国各地で避難暮らしを続けざるを得ない人は多い。だが、避難者が置かれた状況は、時とともに見えにくくなっている。政府と福島県は、実態の把握と生活再建の支援を怠ってはならない。

 復興庁や県の統計では、県内外に避難する人は約4万人。ピーク時の4分の1に減った。

 だがこの数字は「実情を正しく表していない」とも指摘されてきた。県が仮設住宅の無償提供を打ち切るのに合わせ、避難者として扱うのをやめるなど、行政の認定の結果にすぎない、という側面が大きいからだ。

 事故の被災地では、避難指示の解除後も住民の帰還が進まない市町村が目立つ。指示が出ていない地域からの「自主避難者」もいる。「自分は避難者」と考える人は、統計より何万人も多いとみられるが、全体像をだれもつかんでいない。

 戻らない人の事情はさまざまだ。避難先で家を買った、子どもが通学中、といったケースのほか、地元の生活環境や放射能などへの不安から、「戻りたくても戻れない」「まだ判断がつかない」という声も多い。

 長い避難生活で、収入の減少や就労の難しさ、健康悪化、孤立などに悩む人は少なくない。貧困や、公的支援の打ち切りで住む場所を失う不安、心身の病に苦しむ人もいる。

 状況は、避難先の自治体や支援団体などの調査で部分的に見えるだけだ。行政の対応は心もとない。政府が昨年行った調査の対象は、避難指示などが出た地域の住民だけだった。自主避難者も含めて実態を調べ、どんな支援や体制が必要かを改めて考えるべきではないか。

 目下、重要なのは住まいの問題だ。福島県などは、すでに避難指示を解除された一部地域からの避難者への住宅無償提供や自主避難者向けの住宅支援を、3月末でほぼ打ち切った。だが数十世帯が転居先を見つけられていない。病気のように深刻な事情を抱える人には同じ条件で住み続けることを認めるなど、柔軟に対応すべきだ。

 支援縮小の背景には、帰還促進に重きを置く県と政府の姿勢がある。戻れる環境の整備は大切だが、長期・広域の避難が続く現実とのずれは明白だ。行政が「区切り」を押しつけるのではなく、帰還、避難継続、移住の各選択肢について、支援策を練り直す必要がある。

 特に復興庁の役割は大きい。日ごろ「避難者に寄り添う」「国が前面に立つ」と強調するが、実際は県任せが目につく。言葉だけでなく、事故の被害者を支え続ける責任を主体的に果たしてもらいたい。

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