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 がんの原因となる遺伝子異常のパターンに合わせ、最適の治療法を探る「ゲノム医療」が本格的に始まる。期待が寄せられる一方で、機微に触れる情報を用いる新技術だ。その扱いや患者との接し方には、従来以上の目配りが求められる。

 100種類以上の遺伝子を一度に調べ、変異が起きている場所を解析する検査を、昨年末、厚生労働省が承認した。これまでに検査や判定を行う11の中核拠点病院と、150超の連携病院が決まり、近く公的医療保険が適用される見通しだ。対象は、病状が進んで標準治療の効果がなくなった患者などに限られるが、保険によって個人の経済的負担が減れば、治療の道が広がることになる。

 一人ひとりのゲノム情報は、がんのみならず、さまざまな病気の診断や治療、発症予測、予防に役立てることが可能と言われ、医療の姿を大きく変える潜在力を持つ。とはいえ、過剰な期待は禁物だ。

 遺伝子異常に見合った薬が見つかるのは現時点で1~2割程度とみられ、治療につながらない場合も考えられる。想定していなかった遺伝性のがんに関する変異が見つかったとき、どこまで本人や血縁者に伝えるか、という問題もつきまとう。

 医師側が検査の特性や限界について、あらかじめ詳しく説明するとともに、丁寧なカウンセリングを通じて、患者を支えていく態勢が不可欠だ。

 発展途上の技術であり、検査結果の解釈や判定をめぐってバラツキが生じないよう、ノウハウを共有し、人材を育成していくことも求められる。

 ゲノム医療を進めるもう一つの狙いに、患者のゲノム情報を集約してデータベース化し、企業や研究機関に提供することがある。新たな治療法や新薬の開発につなげるためで、その担い手となる「情報管理センター」が、昨年、国立がん研究センター内に開設されている。

 ゲノム情報や治療薬の効果などの臨床情報が多数集まる。ここでも、管理を徹底し、患者・家族の理解を得ながら業務を進めていく姿勢が欠かせない。

 さらに、医療現場にとどまらず、遺伝情報をもとにした差別や不当な処遇が起きない社会にしていくことも必要だ。

 厚労省の研究班が17年に約1万人を対象に行ったネット調査では、保険加入や就労などの際に、自分や家族の病歴、遺伝性疾患などが原因で「不適切な取り扱いを受けたことがある」と答えた人が3%いた。

 こうした差別を法律で明確に禁止している国もある。ゲノム医療の健全な発展のためにも、日本でも議論を深めるべきだ。

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