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 赤とオレンジ色の明るい輪の中に広がる黒い闇――。人類が初めて目にしたブラックホールは、科学者たちが断片的な情報から想像していた姿と、ほぼ一致するものだった。

 日欧米など17の国・地域から200人以上が参加したチームが、ブラックホールの撮影に成功した。強い重力で周囲の物質や光をのみ込んでしまう特殊な天体だ。世界の八つの電波望遠鏡をつなぎあわせて巨大な仮想望遠鏡をつくり、月面上のゴルフボールを地球から見分けられる解像度を実現した。

 この快挙が、東京をふくむ世界の6都市で同時に発表されたのは意義深い。

 ヒッグス粒子の発見や重力波の観測など、近年ノーベル物理学賞を受けた研究は、国境を超えた連携の上に成り立つものが目につく。こうした国際協調は世界の平和の実現にも資する。日本は今後も積極姿勢で臨み、存在感を発揮してほしい。

 今回の研究では、南米チリにあるアルマ望遠鏡が中心的な役割を果たした。2011年に観測を始め、日本の国立天文台も運用に大きく貢献している。

 だが足元に目を転じると、大型望遠鏡の建設計画が進む一方で、十分な予算が確保できない施設もある。最先端に挑みつつ裾野の広がりをどう維持していくか。政府の科学政策のあり方がここでも問われている。

 さまざまな観測の試みからブラックホールの存在は確実視されていた。そうであっても、わかりやすい画像で示されたことで、人々の好奇心と関心を呼び起こした意義は大きい。胸を躍らせてニュースに接した子どもたちから、明日の科学を担う人材が育ってくるだろう。

 宇宙をめぐる研究は長い歴史があるが、いまだ謎は多い。ブラックホールが、どのようにして生まれ、宇宙の進化にいかなる役割を果たしたのかも、わかっていない。そもそもブラックホールを含む天体や星のすべてを集めても、宇宙に占める質量やエネルギーの5%程度に過ぎないとされる。残りのいわゆる暗黒物質や暗黒エネルギーの正体は未知のままだ。

 発見があったとしても、それがただちに人間の暮らしを豊かにしたり、利潤をもたらしたりするわけではない。だが、どんなふうに発展するかわからないからこそ、人類の共通財産として大切にしたい。

 相対性理論に基づき、ブラックホールの存在が予言されて1世紀。会見した本間希樹(まれき)・国立天文台教授は「100年かけて解こうとしてきたジグソーパズルの最後のピースが埋まった」と語った。次の100年の歩みが、すでに始まっている。

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