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 原発の安全対策を軽視しているのではないか。電力会社への疑念が膨らむ事態である。

 再稼働した原発をもつ関西、九州、四国の電力3社がそろって、「原発のテロ対策施設を期限内に完成できない」との見通しを示した。原子力規制委員会に期限の延長を求めている。

 航空機テロの際、深刻な事故を防ぐのに欠かせない施設が未整備では困る。規制委は厳しい姿勢で臨んでもらいたい。

 テロ対策施設は、2013年施行の新規制基準で設置が義務づけられた。01年の同時多発テロを受け、米原子力規制委員会(NRC)がつくったテロ対策の考え方を踏襲したものだ。

 万が一、航空機テロで制御室が破壊されても、福島第一原発のようなメルトダウンを起こしてはならない。そのため、100メートル以上離れたところに臨時制御室や発電機などを備えた対策施設をつくり、原子炉を冷却し続けることになっている。

 3社は今回、6原発12基について、テロ対策施設の設置期限を1年~2年半ほど超えてしまうと規制委に説明した。工事が大規模で難易度も高いため遅れているという。

 だが、期限はすでに一度、延長されている。当初の設置期限は、新規制基準の施行から5年に当たる昨年だったが、規制委は「各原発の工事計画の審査終了から5年以内」に改めた。原発本体の審査に時間がかかり、対策施設の建設が遅れていることに配慮したのだ。

 にもかかわらず期限を守れないという3社の訴えに、規制委の委員らから「見通しが甘い」「延期はありえない」と厳しい声が出た。当然である。

 期限に間に合わない原発は、設置基準を満たしていないことになる。このうち再稼働ずみの9基については、規制委が運転の停止を命じることも可能だ。規制委の更田豊志委員長は「公開の場で5人の委員が議論して対応を決める」と述べた。

 新規制基準のクリアが原発再稼働のお墨付きになっている以上、基準を満たさない原発はいったん止めるのが筋だ。でないとコンプライアンス意識が緩み、安全対策がおろそかになる。規制委が運転停止命令をためらう理由はないはずだ。

 そもそも電力会社側に「航空機テロは起きるわけがない」という意識がなかったか。ありえないとされた原発の全電源喪失が福島で起きた事実を、改めて思い起こすべきだ。あらゆる事態に備える、という福島の事故の教訓を忘れてはならない。

 暴走し始めると手がつけられなくなる設備を動かしている。そのことを、電力会社は改めて肝に銘じてもらいたい。

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