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 欧州か、ロシアか。地理的にも歴史的にもそのはざまに立つのが、ウクライナである。

 旧ソ連から90年代初めに独立して以降も、どちらに近い立場をとるか、問い続けてきた。

 だが少なくとも当面は、欧州との統合をめざす国として歩む――その答えを出したのが、今回の大統領選挙だった。

 おとといの決選投票までに結論は出ていた。ともに親欧州を掲げる2候補が勝ち残った。そして当選したのは、政治経験がまったくないテレビタレントのゼレンスキー氏である。

 同国東部では今も、ロシアから支援を受ける分離独立派との紛争が続いている。多様な文化や言語を抱える国民の結束を強め、国政を安定させるよう知恵を結集してもらいたい。

 対立候補は現職のポロシェンコ大統領だった。開票結果によると、ゼレンスキー氏の得票がほぼ全土で上回った。

 決選投票の焦点はロシア問題ではなく、経済の低迷や汚職だった。現職を含む新興財閥やエリートの敗北は、既成政治を拒む国民の怒りを映している。

 そのなかでゼレンスキー氏が排他的な大衆扇動に走らなかったことは評価できる。有能な人材を生かした斬新な政治で、秋の議会選まで人気を保てるかが当面の課題となろう。

 ロシアのプーチン大統領は、自らの失策を自覚するべきだ。5年前、親ロ派のウクライナ大統領が首都を追われる混乱に乗じてクリミア半島を併合した。

 東部では多数の命が失われている。ウクライナではロシア語を話す人々を含めてロシアを敵国とみる者が多数となった。

 今回の選挙で、ロシアが後押しした候補は第1回投票で約1割しか得票できなかった。両国の経済統合をめざす有力候補は今後、出ないだろう。

 ロシアでも、クリミア併合後に8割を超えたプーチン氏の支持率は、併合前と同じ6割台に戻った。国際制裁も考えれば、失ったものは実に大きい。

 ただ、ウクライナの国民は、ロシアとの間で親類や友人を持つ人も多い。こうした絆に十分に目配りする寛容さが新政権には求められる。

 ゼレンスキー氏は、ロシアとの問題は多国間の枠組みで、対話を通じて解決する考えを示している。その点で重責を担うのはドイツとフランスだ。

 両国が4年前に仲介したウクライナ東部の停戦合意は、履行が滞っている。ロシア、ウクライナも含む4首脳の会談はこの2年半、開かれていない。

 メルケル首相とマクロン大統領は、プーチン氏に対話の席につくよう働きかけ、ウクライナの安定化を支援してほしい。

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