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 東京・上野池之端に、横山大観が暮らした旧宅が横山大観記念館として公開されている。2017年に旧宅と庭園が国の史跡および名勝に指定されたのを記念した特別展「画業と暮らしと交流―大観邸―」が24日から東京・日本橋高島屋S.C.で開かれる。大観の作品をはじめ、下絵や写生帖(ちょう)など創作の過程が垣間見える資料、画具、遺品などを一挙に紹介する。大観のひ孫として記念館の執行理事をつとめる横山浩一さんに本展への思い、大観の妻である静子夫人との思い出を寄せてもらった。

 「お正月も近いよ。霊峰飛鶴を床の間に掛けておくれ」。昭和40年代、私の曽祖母にあたる横山大観の妻、静子夫人からの声を鮮明に覚えている。

 描いた年より随分と前に作製された白い桐箱(きりばこ)に納めてあり、正月を迎えるための作品だと教えられた。近くで見ると、自分の知る絵の具からは編み出せない青色。鶴は丁寧ではなくざらりと描いているではないか、右端の鶴は途中で途切れているではないか……など、毎年不思議な作品だと感じながら床の間に掛けていた。

 そして元日がくると堅山南風さん、前田青邨(せいそん)さん、奥村土牛さん、中村貞以さんなど当時の日本美術院の先生方が訪れた。制服に着替え、静子夫人と共にお一人ずつ丁寧に銀杯にお屠蘇(とそ)を振る舞い、昔話に興じた。先生方のお話から大観は話題豊富、おちゃめで博学であり、言動に求心力があったことを少しずつ理解していった。

 静子夫人とは同じ誕生日ということもあり、とりわけ可愛がってもらった。昭和51(1976)年、夫人が死去し同年に財団法人横山大観記念館が設立された。大観夫妻が言い残した「資産は日本美術の発展のために活用してほしい」という志を具現化するためである。もちろんお正月のメンバーの賛同、協力を得ての話である。

 年がたち、絵画作品を鑑賞するだけでなく、遺品や交流の記録を調査し、大観が旅した場所を訪ねてみると、その時々に出会った人物や自然を素直に心に受け止め昇華し、新しい表現に臨んだ姿が浮かんでくる。

 当館は平成29(2017)年に「横山大観旧宅及び庭園」として国の史跡及び名勝に指定された。大観のデザイン力が設計表現に深く生かされていること、庭木などの自然が作品創作に取り入れられていることが主な理由である。

 今回の展覧会では、作品だけでなく、大観邸のなりたちや大観が愛した遺品、交流の軌跡などを紹介し、デザインセンスや往年の会話が感じ取れるよう、多面的に横山大観の人物像が浮かび上がるよう配慮が重ねられている。全長26メートルを超える絵巻「四時山水」の一挙展示、初公開の遺品や所蔵物など心行くまでご堪能いただきたい。

 あらためて「霊峰飛鶴」を少し遠目から鑑賞すると、ざらりとした鶴はいない。互いに目配せしながら富士の高みを目指している仲間たちがいる。途切れた鶴は画面を飛び出す勢いを工夫し伝えたかったのだろう。次の時代を迎える日本。この絵は床の間から静かに後進たちの活躍を願っているに違いない。

 (横山大観記念館執行理事)

 

 <横山大観>

 明治元(1868)年、水戸藩士の子として生まれる。東京美術学校で、1回生として岡倉天心らに学んだ。天心が同校校長の職を辞すと、ともに日本美術院の結成に参画。同院の経営が行き詰まった際は、茨城県の五浦に移住した。天心没後、同美術院を再興。明治、大正、昭和にわたって新しい日本画の創造に取り組んだ。家庭生活では、日本美術院草創期の試練の中、最初の妻、そして幼い娘に病で先立たれ、のちに再婚した妻も失っている。3番目の妻である静子夫人とは、大観が45歳のときに結婚した。昭和33(1958)年、89歳で死去。

 <横山大観記念館>

 明治41(1908)年から大観が過ごした、上野池之端に残る自宅兼画室および庭園からなる。大正8(1919)年に完成した木造2階建ての数寄屋風日本家屋は、東京大空襲でほとんど焼失したが、昭和29(1954)年にほぼ同じ形で再建され、亡くなるまで創作活動の場となった。内装や細川護立侯爵から贈られた石を配した庭園の意匠にも大観の意向が反映されている。昭和51(1976)年に記念館として一般公開された。

 同館では大観の作品を床の間に飾った状態で鑑賞できる。写生帖や下絵などの貴重な資料、大観の遺愛の品なども展示している。詳細はHP(http://taikan.tokyo別ウインドウで開きます)。

 ■あすから日本橋高島屋S.C.で

 ◇24日[水]~5月6日[月][休]、東京・日本橋高島屋S.C.本館8階ホール

 ◇午前10時30分~午後7時30分。最終日の5月6日は午後6時まで。いずれも入場は閉場の30分前まで

 ◇一般800円、大学・高校生600円、中学生以下無料

 ◇問い合わせ 日本橋高島屋S.C. 03・3211・4111

 主催 朝日新聞社

 協力 公益財団法人 横山大観記念館

 後援 台東区、台東区教育委員会

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