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 政府が思う方向に産業を導こうとしても、失敗することが多い。その事例がまた積み上がったのではないか。現実を直視し、教訓にすべきだ。

 液晶パネルのジャパンディスプレイ(JDI)が、中国・台湾の企業連合傘下で経営再建を図ることになった。政府が主導し、官製ファンドの産業革新機構が巨額の資金をつぎ込んだ液晶産業の再編は、はかばかしい成果をあげないまま頓挫した。

 JDIは2012年に日立製作所、ソニー、東芝の液晶事業を統合し、機構が2千億円を出資して発足した。各社の技術を集め、大規模投資で競争力を高める狙いだった。機構は16年度にも750億円の追加支援を決めるなど関与を続けてきた。

 当初の機構の位置づけでは、JDIは「オープンイノベーションの精神の下、次世代の国富を担う産業創出のためにグローバルに長期的かつインパクトのある投資を行うという産業革新機構のミッションを象徴する案件」だった。

 だが、JDIは赤字体質を脱せず、「産業創出」の成果も乏しい。今回の発表後、世耕弘成経済産業相は「JDIが実用化し販売している現在の技術は、既に他国の競合企業が保有・実用化している」と述べた。「虎の子」の有機ELも、ようやく量産に乗り出す段階だ。官が関与する大義名分だった産業革新の失敗は否定しようがない。

 機構の収益面への貢献も心もとない。14年度の上場時に1600億円余りを回収したが、その後も持ち続けている株式の価値は大きく目減りしている。貸し付けなども含め、回収に万全を期すべき状況だ。

 総じて見て、官製ファンドの投資として正当化は難しい。仮に当初とは液晶産業をめぐる環境が大きく変わったのだとしても、変化への機敏な対応ができない官が手を出す仕事ではなかったということだろう。

 今回の事態は単なる産業政策の失敗ではない。JDI支援は政府による「救済」の色合いも強かった。日本経済の長期停滞について研究してきた星岳雄スタンフォード大教授らは「生産性や収益性が低く本来市場から退出すべきであるにもかかわらず、債権者や政府からの支援により事業を継続している企業」の存在は、健全な企業の成長を押さえ込み、経済全体の足をも引っ張ると指摘している。

 一時的な市場の混乱時に企業を支援することはあり得るし、経済全体での雇用安定化の努力も不可欠だ。だが、政府が個別企業や産業に対して、それ以上の介入をする場合は、失われるものも少なくない。そのことを肝に銘じるべきだ。

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