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 密室で利害を調整する旧来のやり方で決めた政策では、多くの国民の理解を得ることは難しい。政府が検討している地球温暖化対策の長期戦略である。

 長期戦略とは、「2050年までに温室効果ガスを80%削減する」という日本の長期目標を実現するシナリオのことだ。先日、経済産業省と環境省の合同有識者会議で示された政府案には、鉄鋼や電力など産業界の意向が色濃くにじんでいる。

 これからも原発に頼っていく方針を明確にし、石炭火力を使い続ける余地も残した。その一方で、炭素税や排出量取引などのカーボンプライシングの議論には慎重だ。

 いまできる大胆な対策は盛り込まず、将来の技術開発に過度な望みをかけている。脱炭素社会を実現する説得力は弱い。

 安倍政権はこの戦略を正式決定して国連に提出し、6月のG20大阪サミットで議論を主導する考えだ。しかし、この内容では、議長国としてリーダーシップを発揮するのは難しい。

 政府案は、今月初めの有識者懇談会の提言を土台としている。不可解なのは、提言になかった原発への積極姿勢だ。

 提言は原発を技術的な選択肢の一つとしつつも、活用については議論が必要だという表現にとどめていた。ところが政府案は、原発を実用段階にある脱炭素化の選択肢と位置づけ、「再稼働を進める」「利用を安定的に進める」と踏み込んだ。

 今後についても、「安全性・経済性・機動性に優れた炉を追求する」と、新たな原子炉の技術開発に意欲的だ。小型炉や高温ガス炉などのほか、もんじゅ(福井県)で頓挫した高速炉まで明記している。

 原発は、事故が起きた場合の被害の甚大さや放射性廃棄物の処分など、難しい問題を抱えている。経済性も失いつつあり、古い炉の引退とともに段階的にゼロに近づけていくべき電源だ。将来の温暖化対策の主役とはなりえない。

 にもかかわらず、土壇場で政府案に盛り込まれた。なぜそうなったのか、説明はない。

 石炭火力をめぐっても不透明な動きが見られた。有識者提言をつくる際、座長案にあった石炭火力全廃の方針が、秘密会合で産業界の強い反対にあって撤回を余儀なくされたのだ。

 温暖化対策には様々な考え方があり、みんなが満足する解を見つけるのは難しい。だからこそ、脱炭素社会への大転換を促す長期戦略づくりは、開かれた場で議論をし、合意を形成していくプロセスが不可欠だ。

 関係省庁や業界が目先の利害にこだわっていては、めざすべき将来像は描けない。

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